藻類の基礎知識
まず海藻肥料の原料となる藻類の基礎知識に関してご紹介いたします。藻類は生物学的な分類上では以下のように藍藻・紅藻・緑藻・褐藻・その他に分けられる生物で、主に炭水や海水に生息しています。
現在のところ約4万種が知られていますが、自然界ではまだ30万種以上が存在すると推測されています。光合成によって有機物を生産することから地球環境における重要な役割を果たしていることが分かっていますが、まだまだ未解明な点が多数ある生物です。
・藍藻
藍藻は酸素発生型光合成をおこなう細菌の一群です。身近に話題になるのは池などで大量発生することで魚の生育環境を悪化させる原因となるアオコ類が挙げられます。他には食用の水前寺のりや髪菜やイシクラゲやイワヒゲノコブ等があります。
・紅藻
紅藻はその名前の通り赤い色をしている藻類で、身近なものだと私たちが食卓で口にする海苔の原料です。他には天草やトサカノリやオゴノリやフノリなどが食用として用いられています。紅藻は海藻の中で最も種類が多い生物群です。
・緑藻
緑藻は世界で約6,500種が確認されており、約90%が淡水産です。アオサ類・アオノリ類・ヒトエグサ類が挙げられます。また海ぶどうやミルやアオミドロなども知られています。
・褐藻
褐藻とは褐色または緑褐色の藻類です。大部分が海藻で、日本ではコンブやヒジキやワカメやモズクが挙げられます。潮間帯~海底までの幅広い範囲を生息域としており、世界の大型種は45mを超える長さも存在します。
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海藻肥料とは?海藻資材の農業利用と畜産利用
海藻資材は古来ではそのまま田畑にすき込んだり、現代では利用しやすいように様々な形(ペレット状・固形状・液体状)に加工することで人・農業・畜産業・漁業などの分野で利用されてきました。本章では農業と畜産の分野に関して記載します。
農業利用
海藻を農作物の肥料として利用することは昔から世界各地で行われてきました。イギリス・スペイン・アイルランド・フランス等の国では12世紀頃から海藻を田畑に埋めるという方法がとられ、海藻の養殖もおこなわれていたようです。日本でも江戸時代にテングサを田畑の肥料として利用していたという記録があります。肥料としての海藻はコンブ属・カジメ属・ホンダワラ属などが用いられています。
海藻肥料の効果としては、食味向上・果実重量増加・収量増加・樹勢回復・病害の発病低下・霜による耐性などがあります。実際にジャガイモやトマトに葉面散布すると食味が向上したり、根こぶ病や立枯病の発病度が低下することが報告されています。
近年の農業は化学肥料の投与により収量を増大させる手法がとられてきました。しかし、化学肥料は農地からの栄養分の吸収が効率よく行われるため、土壌の栄養分という”貯金“が不足することで荒廃する原因となっています。そのため、土壌改良や連作障害の軽減のために天然の有機質である海藻肥料が注目されています。
畜産利用
海藻を畜産の飼料として利用することも紀元前40年頃の古代ギリシャやローマ時代において記録があるようです。牛や羊に海岸で打ち上げられた海藻を食べさせたり、乾燥させて冬の飼料不足の補填として利用していました。また鶏に与えることで卵の卵黄の色の向上する、牛に与えることで牛乳内のバター成分が向上する、という報告があります。海藻肥料の成分であるミネラル・カロテノイド・摂餌誘引促進物質・ビタミンなどが作用していると考えられています。使用効果としては代謝や発育の促進・抵抗力の向上・生産性の向上・品質の向上が挙げられます。
海藻肥料の成分と効果に関して
海藻にはミネラルやカリウムが豊富に含まれることから、農作物への効果はそれらが要因とされてきました。しかし近年、海藻の成分の植物ホルモン(オーキシン・サイトカイニン・ジベレリンなど)が農作物の成長や成熟に好影響を与えていることが分かりつつあります。
褐藻のアスコフィルム・ノドサム(学名:Ascophyllum nodosum)はアルギン酸・マンニット・ラミナリン・各種ミネラル・ビタミン・アミノ酸といった60種類以上の微量要素や植物ホルモンを豊富に含んでおり、この海藻粉末を希釈して散布することで発根・発芽・養分吸収や生育を促進、樹勢旺盛といった効果が期待できます。また間接的な効果としては病虫害やその他の障害に対する抵抗力が増大することで品質向上(増糖・着色増進・果実肥大)と増収が期待できます。またその他には収穫物の貯蔵期間を延長する効果も認められています。
海藻肥料の使用方法
海藻肥料として販売されているものとしては主に液体状のものと固形状(ペレット・粉末)のものの2種類があります。固形状(ペレット)は遅効性があるので元肥として使用します。液体状や固形状(粉末)は液肥として栽培期間中に使用します。特に葉面散布として使用すると葉からすぐに吸収されるので即効性があります。各メーカーが様々な海藻肥料を販売していますが、実績のあるものを選ぶと良いでしょう。なお農薬と一緒に混用して使用ができる製品を選定すると使いやすいのでおすすめです。
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おすすめの海藻肥料『海藻のエキス』
そこでご紹介したいのが、セイコーエコロジアで取り扱っている海藻のエキスです。原料のノルウェーで採取された「アスコフィルム・ノドサム(学名:Ascophyllum nodosum)」は自然環境豊かな北大西洋海流域に繁茂する海藻で、河川から流入した豊富な栄養分を蓄積しているという特徴があります。加工し製造した粉末は水にサッと溶けるため、灌水・潅注・葉面散布の際に簡単に混用することができます。農薬と混用することができることも大きなメリットです。追加の散布作業が必要ありません。アルギン酸・ラミナリン・マンニット・フコイダンなどの多糖類、各種ミネラル・ビタミン・アミノ酸・微量要素などの60種類以上の栄養素や植物ホルモンの作用により、植物の成長促進・品質向上・連作障害の軽減・作物貯蔵期間の延長といった効果が期待できます。
海藻のエキスの解説動画はこちら▶【解説】海藻のエキスの特徴・メリット・使用する際の注意点を6分で徹底解説
導入による期待されるメリット
1.農作物に対するメリット
成長を改善 :発根・発芽・光合成・養分吸収の向上
品質の向上 :増糖・食味アップ・着色増進・果実肥大
微量要素過剰症・欠乏症の軽減:化学肥料常用等による微量要素バランスの乱れを改善
連作障害の軽減 :連作による土壌の養分欠乏に対する補給
作物貯蔵期間の伸長 :日持ちする栄養バランスのとれた健康な作物が育つ
2.農作業従事者に対してのメリット
作業の省力化:水に溶けやすく混合に時間がとられない、農薬と混用可能で追加の散布作業が必要ない
低コスト:液体状海藻肥料よりもコストが安く農業経営の経費を軽減する
海藻肥料を使用して農業を楽しく
今回は海藻肥料に関してご紹介してきました。海藻肥料を利用することで農作物の成長に大きなメリットがあることがお分かりいただけたかと思います。なお海藻肥料は近年、バイオスティミュラント資材としても注目されています(バイオスティミュラントとは?|農作物の生産を向上する資材)。今回のコラムを海藻肥料の活用にお役立ていただければ幸いです。
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コラム著者
満岡 雄
2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Xを更新していますのでぜひご覧ください。