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植物の根における酸欠とは?酸欠の条件や酸素供給方法について解説
公開日2021.10.26
更新日2021.10.26

植物の根における酸欠とは?酸欠の条件や酸素供給方法について解説

植物の根が酸素(O)を消費していることをご存じでしょうか。そもそも酸素は植物の生育に不可欠な必須要素の1つに含まれており、植物は空気(大気)から酸素の取り込みを行っています。植物の根は自身の呼吸のために酸素を必要としており、言い換えると、植物の根は酸素がないと酸欠状態になってしまい少なからず生育に悪い影響が発生してしまいます。
今回のコラムでは、植物の根の酸欠対策と最近話題のナノバブルと農業の関係について紹介したいと思います。

根の酸欠とは?

植物の根は土壌中の酸素を呼吸によって消費しています。このとき、土壌動物や土壌微生物の活動によっても土壌中の酸素が消費されており、土壌中の空気は意外にも酸素不足が認められています。土壌中の空気には窒素やメタンなども組成されていますが、とりわけ酸素と二酸化炭素に関して酸素は大気中より土壌中の方が少なく、二酸化炭素は大気中より土壌中の方が多くなっています。

つまり土壌には酸素や二酸化炭素などが停滞しないように空気が入れ替わるような仕組みが必要なわけですが、面白いものでそのような仕組みが自然に備えられているのです。例えば、気温より地温のほうが高ければ地熱を放出するときに空気の移動が起こりますし、土壌に向かって風が吹いても空気が移動します。また、雨が降れば土壌中の二酸化炭素は雨に溶けて流れ出てしまいます(酸素は水に溶けにくいです)。ただしこのような空気の入れ替わる仕組みも、ある程度土壌中に空気の隙間(気相)が存在していないと機能しないと考えられます。例えばガチガチに踏み固められた土壌には水が浸み込みにくいことでイメージできると思います。

次章では植物根が酸欠しやすい条件や土壌構造について紹介したいと思います。

大気中と土壌中の酸素と二酸化炭素の組成関係

  大気中 土壌中
酸素
二酸化炭素

根が酸欠しやすい条件|土壌構造や栽培方式との関係

土耕栽培の場合

土壌中の気相が乏しいと根が酸欠しやすい条件といえます。土壌質にもよりますが通常土壌は土質、腐植、根の影響を受けて団粒構造を形成します。このような土壌の構造は三相分布*しており固相、気相、液相に分けられます。固相は土質によって殆ど固定された割合で存在し、火山灰土では20%前後、非火山灰土では40%前後の固相率になっています。気相率は20~30%が植物の生育に最も適しているといわれ10%以下だと生育に悪影響が生じるといわれています。また、気相率と液相率を合計した値を孔隙率と呼びます。

気相は空気が存在する隙間ですが、上記の通り気相率が低いと植物の生育に悪影響を与えます。この気相率の低さが植物根を酸欠状態にしています。つまり気相率を確保することが植物根の酸欠に最も直結した対策といえます。

水耕栽培の場合

ここまでは植物が土壌に存在していることを想定して説明を進めてきました。では、土壌が存在しない水耕栽培の場合ではどうでしょうか。ここでいう水耕栽培とは湛水型の栽培方式を想定します。この場合、固相率が0%で孔隙率が100%になり、少なくとも水中には植物の生育に適した気相率20~30%の確保ができていないことは容易に想像できます。つまり植物根は酸欠状態であるといえ、なんらかの酸欠対策が必要になってきます。

次章で紹介するナノバブルは水中に小さな空気の泡を大量に含んでおり液相率が確保できない場合でも植物の生育を維持することが期待されています。

*三相分布:土壌構造は三つの要素で構成されており、かみ砕いて表現すると固相は土や有機物など、気相は気体が存在している隙間の部分、液相は水や液肥など水分が存在している部分をいいます。それぞれには役割があり<固相は植物の自立(根が張る)や栄養分の電気的吸着><気相は通気性、酸素供給、根の伸長領域確保、空気のガス交換領域><液相は根の水分供給、水分保持性や排出性(排水性)>などに関係しています。

こちらのコラムも是非ご覧ください!

>>>根圏における根の活動とは?土壌微生物との共生関係について

ナノバブルとは?

ナノバブルとは、直径1μm未満の非常に小さな泡のことをいいます。最近は呼称変更が検討されウルトラファインバブルとも呼ばれるようになりました(本コラムではナノバブルで統一します)。またナノバブルより直径が大きく1~100μm未満の泡のことをマイクロバブルといいます。この2種類の泡のことを合わせてファインバブルと呼びます。ファインバブルは家庭や産業を事例として洗濯機、お風呂、シャワーヘッド、農業、水産業、医療など様々なシーンで活用されています。水中にファインバブルが存在することは界面活性作用を有することを特徴としており、たとえばファインバブルの表面はマイナスに荷電しているためプラスの荷電を引き付けます。また水中に微細な泡が多く存在することは水中の酸素量が多くなることを意味しており、このことが農業でファインバブルが活用できる要素になっています。

ナノバブルの農業への活用方法

ナノバブルの農業への活用方法としては灌水、液肥希釈、葉面散布剤希釈、水耕栽培が適しています。

灌水は通常の水やりや灌水の水をナノバブル水で行います。これによりナノバブル表面のマイナス荷電にプラス荷電であるカリウム(K)、カルシウム(Ca2)、マグネシウム(Mg2)などの肥料成分が吸着され土壌中に留まるため溶脱することなく効率的な肥料吸収ができます。液肥と葉面散布の場合でも同じようにマイナス荷電にプラス荷電の肥料成分が吸着されるので、液肥や葉面散布剤をより効果的に植物に届けることができます。

水耕栽培では植物根の酸素不足を防ぐ効果が期待できます。水中にナノバブルが存在すると、ナノバブルから水中に酸素が溶け溶存酸素量が豊富になります。水耕栽培の場合は定期的なナノバブル水施用よりも常にナノバブル水が植物根に触れている方が望ましく、これは植物根の呼吸を常に良好な状態に保つことや根腐れ抑制を期待しています。

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>>>ナノバブルを農業に取り入れるメリットとは?導入事例を紹介

植物に対するナノバブルの効果

植物にナノバブル水を施用することで根の酸欠対策と肥料吸収の効率化が期待できることは既に解説させて頂きました。ナノバブル水による酸素と肥料成分は直接的な生育促進と健康増進に貢献することができ、良好な生育は植物自体の免疫力をアップさせることに繋がり健康な株を作ることができるため、間接的なナノバブル水の効果としては耐病性や耐害虫性を挙げることができます。

ナノバブル水施用の具体的な事例として、イチゴのチップバーン抑制に成果をあげています。イチゴのチップバーンはカルシウム欠乏症が原因で発生し、小葉の葉縁部分が壊死し十分な光合成を妨げます。小葉の損傷は光合成抑制に繋がるため生育抑制や糖度低下も懸念され、イチゴの生理障害のなかでも重要なものに数えられます。ナノバブルの表面はマイナスに荷電しており、一方カルシウムイオンはCa2でありプラスに荷電しています。ナノバブル水を通常灌水で施用することで、固相に吸着されたカルシウムを効率的に液相に供給できるので液相のカルシウムが豊富になりチップバーンが抑制されることを説明できます。

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>>>ナノバブルをいちご栽培に取り入れるメリットとは?

ナノバブル水を毎日製造できる!!|ナノバブル水製造装置

製造可能容量に応じて50Lタンク、100Lタンク、200Lタンク、300Lタンクをラインナップ。水道水が出る蛇口と100Vコンセントを1か所ずつ準備してください。タイマー制御によってタンク内で12時間のバブリングを行い高濃度のナノバブル水を生成します。100~300倍に希釈して灌水に用います。イチゴの場合、導入していただいた多くの農家さまの収穫量を平均すると「例年より10%の収量が増えた!!」という感想が集まっています。
最近イマイチ生育が悪いなぁ、収量を上げたいなぁと考えている方は、土壌中の酸素に着目してみては如何でしょうか。

植物の根における酸欠とは?酸欠の条件や酸素供給方法について解説(イメージ)
ナノバブル水製造装置100Lタイプ
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ナノバブル水製造装置200Lタイプ
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根活20Lタンク
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ナノバブル水製造装置(50L)の設置の様子。
雨よけできる納屋やハウスに設置します。
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ナノバブル水製造装置(50L)の設置の様子。
本体が安定するように水平をとります。
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ツマミが1つ、ボタンが1つなので操作が簡単!!
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ナノバブル水の製造時間を12時間に設定。毎日自動で製造します。写真は夕方18:00~早朝6:00。
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水位センサー(左)とナノバブル生成器(右)
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根張りを良くして植物を元気にする!

酸素不足を克服した土壌環境は植物根にとって最適であり、酸素や栄養分を求めて植物根は更にその領域を拡大していきます。植物の根張りは複合的な要因で決定していくので必ずしも酸素や肥料成分だけが影響を与えているわけではありません(例えば病害虫に侵されれば植物の生育は停滞します)が、農業機械の大型化に指摘され作土深が浅くなっていることは孔隙率や植物の根圏領域を狭め、少なからず根張りを抑制している要因になり得ると考えられます。根本的対策には深耕して作土深を改善することですが、作土深が浅い場合でもナノバブル水を利用することで根張り対策の補助になることが期待できます。

最後は土壌物理性の話題へと話が少し反れてしまいましたが、ナノバブルが土壌中の酸素量改善と肥料吸着などに一役買っていることは今後さらに農業分野で知名度が広まることと期待できます。

植物の根における酸欠とは?酸欠の条件や酸素供給方法について解説

コラム著者

小島 英幹

2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法など。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の研究に着手する。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。

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