コラム
桃畑のヤガ対策を省力化?防蛾灯を利用した害虫対策
公開日2023.07.31
更新日2023.07.31

桃畑のヤガ対策を省力化?防蛾灯を利用した害虫対策

収穫直前の桃が部分的に腐っていたり、落ちていたりするといったご経験はないでしょうか。その原因は、もしかすると夜に飛来して加害するヤガ類の仕業かもしれません。ヤガ類の食害痕はとても小さいため、気が付かないうちに被害が広がってしまうことがあります。これらヤガ類の防除方法として採用されているものに、農薬(殺虫剤)や防虫ネットなどがありますが、防除効果や省力化の観点から黄色や緑色の光を利用した防蛾灯による防除にも注目が集まっています。今回のコラムでは桃畑における防蛾灯の防除について詳しく解説していきたいと思います。

ヤガによる桃の被害

ヤガは「夜蛾」と書くとおり、夜に飛来して桃の果実を吸汁します。まだ被害を受けていない桃に直接加害する一次被害と、一次被害をうけた部分を吸汁する二次被害があり、二次被害を受けた桃のほうが著しく果実が腐敗します。加害された部分は丸い穴が開き少しへこんで、スポンジ状となり腐敗し場合によっては落果します。小型のヤガは被害痕が小さく、数日たってから被害が現れるのでやっかいです。

ヤガ類の成虫は、桃の果樹園の周辺の雑木林などで発生し、収穫前の甘い匂いを放ち始めた桃を狙って飛来します。一般的な果実袋では、袋の上から口針を刺して吸汁することもあります。無袋栽培品種ではさらに被害が大きくなります。夜9時~11時の2時間だけで1樹あたりの飛来数が100匹にも及ぶという記録もあり、何ら対策を実施しないと全損のリスクがあります。

一般に桃を加害するのは、アカエグリバ・アケビコノハ・オオエグリバ・ヒメアケビコノハ・ヒメエグリバなどです。ヤガの幼虫はアケビ科やツヅラフジ科の植物を食べて育ち、成虫が桃を加害します。そのため、桃畑の近くの山林に幼虫の生息場所となる落葉広葉樹の植物が多いと被害が発生しやすくなります。反対に桃畑の周囲が針葉樹ばかりの圃場では被害が少ないようです。

桃畑での防蛾灯の役割

ヤガ類の成虫は、太陽の光に反応して日中は木と同化してじっとしています。昼間は鳥などの天敵に捕食されやすく、身を守るために活動が鈍くなるという習性があります。この習性を利用した防除資材が防蛾灯で、日没の少し前から日の出の少し後まで黄色や緑色の光を点灯させることで、ヤガ類はずっと日中だと勘違いして活動しなくなります。防蛾灯の光には、殺虫作用はなく、あくまでもヤガ類の摂食活動を鈍らせるという作用をもつということになります。

ヤガ類の防除対策には農薬(殺虫剤)の散布や、防虫ネットの被覆などがありますが、夜に飛来するヤガ類に対しては殺虫剤が効きにくい点や、桃畑における防虫ネットの被覆は労力が大きかったり、傾斜地では被覆自体が困難であったりするなどのデメリットがあり、これらを補う方法として防蛾灯の採用が考えられます。

桃畑での防蛾灯の選び方と設置方法

防蛾灯の設置する高さと光の届く範囲については、製品によって異なります。メーカーごとに推奨している範囲が異なりますので、広い範囲をカバーできる製品を選ぶと設置する手間を省力化できます。桃畑での設置は風雨に晒されることになりますので、防蛾灯や配線設備には防水性能を備えているものを採用すると良いでしょう。LEDタイプのものを選ぶとランニングコストを抑えられます(ただし、導入費用は高くなります)。今どきの防蛾灯としてはないかと思いますが、紫外線領域の光線を多く発している製品は、正の走行性を持つ害虫を引き寄せることとなりますので選ばないでください。

一般に桃を加害するヤガは、夜になると周辺の山林から飛来するため、被害を受ける場所は圃場の中心よりも周囲のほうが多い傾向があるようです。桃畑全体を防蛾灯で電照させる方法がベストですが、コストを抑えたい場合は、圃場周辺を囲むように防蛾灯を設置しても効果が期待できるかもしれません。ただし、その場合は防蛾灯で囲んだ内側に、ヤガ類の幼虫が生息できるような植物がないことが条件になります。

桃畑での防蛾灯設置のメリットとデメリット

メリット

圃場でのヤガ類の活動を抑えるため、薬剤散布の回数を減らす効果が期待できます。人の手がかかりにくくなり、殺虫剤代も抑えることが可能です。防蛾灯は一度設置してしまえば、被覆や撤去が必要な防虫ネットに比べて大幅に省力化ができます。また、防蛾灯は防虫ネットの設置が難しい傾斜している圃場でも取り入れやすいというメリットもあります。

デメリット

明反応を示さないヤガ類以外の害虫には効果はありません。薬剤や防虫ネットなどによる別の防除対策が必要になります。せっかく防蛾灯を設置しても樹の葉の密度が高いなど、光が届かない場所が多すぎると効果がありません。また、当然ですが停電が発生したときには利用できません。桃は光の影響を受けにくい植物ですが、長日植物や短日植物を周辺で栽培している場合、黄色や緑色に含まれる光が悪い影響を与え、生育障害を引き起こす可能性がありますので注意が必要です。

おすすめの資材|防蛾灯 虫ブロッカ―黄緑・緑

桃畑でのヤガ対策におすすめの防蛾灯が虫ブロッカ―黄緑・緑です。LEDの光を点灯させて夜行性のヤガ類の行動を抑制し、桃の吸汁被害を軽減させる効果が期待できます。本体や専用の延長コードは防水性ですから屋外の桃畑でもご利用いただけます。100Vタイプと200Vタイプをご用意していますので、圃場の電源環境に関わらず、すぐに導入することができます。虫ブロッカ―の導入により農薬散布の回数を減らせれば、同一系統の殺虫剤連用による薬剤抵抗種の発生リスクを低下させることができます。

防蛾灯を上手に活用して収穫直前の桃を守りましょう

ヤガ類は甘い匂いが出始めた収穫直前の桃をめがけて襲来します。せっかく大切に育てた桃を加害されては、それまでのかけた手間やコストが台無しになってしまいます。防蛾灯は、それだけで対策できる資材ではありませんが、上手に利用すれば農作業を省力化させつつ桃を守ることができるのではないでしょうか。今回のコラムをお役立ていただければ幸いです。

関連コラム:モモ(桃)に最適な肥料とは|基礎知識と栽培方法を解説

参考資料:
モモを加害する夜蛾類の発生と被害について
(茨城県病害虫研究会)

桃畑のヤガ対策を省力化?防蛾灯を利用した害虫対策

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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