ハダニの生態と被害の特徴
ハダニは植物の葉裏に生息しています。植物細胞に口針を刺し、栄養分と同時に葉緑素も吸い取るため、葉っぱが白くなってしまいます。そのため光合成が出来づらくなり生産量が低下し、商品価値が劣化してしまうことに繋がります。
●ハダニとは
ハダニは「ダニ」と名前がついていますがクモの一種です(クモの仲間は足が8本あります、昆虫は6本です)。体長0.5㎜と非常に小さいため圃場やハウス施設内に侵入されてもなかなか気が付きません。そのため白い葉っぱを発見した時には、すでに大発生をしていることもあります。クモの仲間と同様に糸を出して移動し、風に流されて開口部から圃場へ侵入します。水にはめっぽう弱いといわれています。
交尾をしなくても繁殖が可能(無性生殖)なので繁殖力が高く増殖しやすいといわれています。無精卵ではオスが生まれ、有精卵ではメスが生まれるようです。メスは1日に数個から10個ほど産卵し、1世代で100個ほど産卵します。孵化した幼虫は3回脱皮して成虫となります。生育期間は温度によって前後し、25℃ではわずか10日前後で卵から成虫になります。ハダニ類はおよそ70種類前後が存在するといわれ、種類によって寄主植物が変わります。
良く知られているハダニの種類 | 寄主植物 |
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ナミハダニ | リンゴ・ナシ・モモなどの果樹 豆類・キュウリ・ナス等の野菜 花卉類 |
カンザワハダニ | 茶・ナシ・リンゴ・カンキツ・カキなど果樹 豆類・イモ類・ウリ類等の野菜 花卉類 |
ミカンハダニ | カンキツ・ナシ・モモ・カキなどの果実 イヌツゲなど |
リンゴハダニ | リンゴ・ナシ・オウトウ・モモ・スモモ・アンズなど (バラ科植物) |
●ハダニが繁殖しやすい環境
ハダニは、高温で乾燥した環境を好みます。水に弱いという性質があるため、梅雨時は活動が抑えられているようです。雨のかからない軒下や施設内に潜んでいる可能性があります。圃場周辺の乾燥しやすい場所に雑草を茂らせておくのは、隠れ家を提供しているようなものですので注意が必要です。周辺環境をチェックしましょう。発生時期は3月~10月頃といわれています。ハウス栽培では環境が良ければ年間を通して発生することもあります。また、同じハダニでも休眠するものとしないものがいます。ナミハダミの黄緑色型は休眠性質を持ち、以前はニセナミハダミという名で分類されていた赤色型は休眠性質を持ちません。
●ハダニによる作物への被害
ハダニはほとんどの作物に寄生します。ミニトマト・茄子のような野菜からリンゴ・みかんのような果樹まで様々です(多肉植物にも寄生します)。発生初期の段階では、葉裏のくぼんだ部分や葉脈の隅にかたまっていることが多いようです。多くは葉裏に寄生しますが、種類によっては果実にも寄生します。植物細胞に口針を刺し、植物の養分を吸汁し加害します。ハダニの被害に遭遇した葉っぱは、葉緑素も吸われてしまうため、白っぽくなり斑点状の傷となります。被害が進行すると葉脈の跡だけが残り、葉がカスリ上となります。栄養分が吸い取られるのと同時に光合成もできなくなるため、作物の生育は悪くなります。最悪の場合は葉が枯れ落ちて、作物そのものが枯れてしまうことに繋がりますので注意が必要です。
ハダニの駆除・発生予防の方法
ハダニは比較的高温で乾燥した環境で発生する傾向があります。糸を吐き出し風に乗って勢力を拡大する性質があります。また体が非常に小さいので人の体についても気が付かず、圃場に持ち込んでしまう可能性もあります。圃場周辺の隠れ家になりやすい場所は注意して管理しましょう。
●ハダニの駆除方法
発生数が少ない場合(初期段階)
ハダニは体長0.5㎜と小さく、侵入を防ぐことも発見することも難しい厄介な害虫です。日頃から作物の様子をよく観察しハダニの被害を発見したら一刻も早く駆除することが大切です。殺ダニ剤が有効といわれていますが、天敵昆虫も一緒に殺してしまうことがあります。また薬剤を安易に使用すると耐性獲得も早いといわれています。初期の段階では農薬を使用しない駆除方法が可能です。ごく限られた範囲で葉裏に隠れていることが多いことから、被害にあった葉っぱの裏をよく観察し、発見したら物理的に粘着テープなどで駆除を行いましょう。
水に弱いという性質を利用し、水責めにすることも効果的です。霧吹き等で葉裏に水を吹きかけて洗い流してしまいましょう。牛乳を混ぜた水溶液を吹きかけることでハダニの気門を塞ぎ窒息させて駆除する方法もあります。この場合、牛乳はそのままにしておくと臭いがしたり、カビが発生したりしますので必ず水で洗い流しましょう。なお濃いめのインスタントコーヒーを吹きかけることもおすすめの方法です。
次に記載しますが大量発生すると農薬に頼らざるを得ないので、無農薬で解決するには初期発生で決着をつける必要があります。
大量発生している場合
薬剤散布が最も速効性が高く効果的な方法です。各農薬メーカーより、ハダニに有効な薬剤が販売されています。有名な薬剤だとペンタック水和剤・アファーム乳剤・スミチオン乳剤などでしょうか。ハダニは薬剤に対する抵抗性の獲得が早いので使いすぎると利かなくなりますので連用は避けましょう。使用できる薬剤や使用方法については、各都道府県の農業技術センターやJA、薬剤メーカーなどで、植物の種類ごとの使用方法に関する情報が発信されていますので確認の上使用してください。
●ハダニの発生を予防する方法
何回か記載していますがハダニは乾燥を好みます。圃場周辺で雨がかかりにくく、枯れかけた雑草が多く生えているところが発生源になりそうです。圃場周辺の雑草を除去するのと同時に、圃場内の乾燥を抑えるために散水を行い、黒マルチや稲わらなどをひいて乾燥防止をすることで予防効果が期待できます。
テントウムシ・カブリダニ・ヒメハナカメムシ・ケシハネカクシといった天敵昆虫を導入することも重要です。なお殺虫剤を使用するときは、これらの天敵昆虫も一緒に駆除してしまうことがありますので散布の際は慎重に判断してください。
ハダニの駆除に役立つ製品「静電噴口」
静電噴口は静電気の力で薬液を対象物に付着させる静電機能付噴霧口です。通常では付着しにくい葉裏への薬液付着率が向上し、約30%の農薬使用量削減が期待できる静電式のノズルです。ハダニの生息場所である葉裏にも農薬が届きやすいので、駆除に役立ちます。
ハウス栽培で役立つ製品「モーターフォグ」
モーターフォグは風力で葉面散布剤を細霧状に噴霧する農業用噴霧器です。細かい霧をつくりだして作物の葉面に薬液を均一に噴霧することができます。ハウス全体に霧を充満させ作物の樹勢を整えます。電動のためコンパクトで使いやすく手軽に扱うことができます。噴霧器として特許登録済の機械です。植物体の枝葉を起たせ、葉・茎を固く引き締める効果があります。
モーターフォグの詳しい使い方:モーターフォグの使い方とコツとは? 上手く葉面散布するポイントと注意点
ハダニの発生を抑えて農作物の健全な生長を
ハダニは農業においてはコナジラミ類やアザミウマ類と同様に大変やっかいな害虫の一つです。初期発生から退治し、大量発生を招かないことが非常に大切ですので必要な対策をとっていきましょう。本コラムが大切な農作物を守り、品質向上や収量増加のお役に立てれば幸いです。
コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。