コラム
農業における衛生管理とは?
公開日2022.10.14
更新日2022.10.14

農業における衛生管理とは?

食品衛生法の改正により、原則的に全ての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理に取り組むことになりました。個人農家や農業経営体が行っている収穫や調整(出荷前の洗浄など)は「採取業」とされ衛生管理の制度の対象外ではありますが、消費者へ安全な生産物を提供するためには農場で衛生管理を的確に行うことは重要です。今回のコラムでは圃場における衛生管理について、その概念と管理に取組む上でのポイントについてお伝えしていきたいと思います。

農業における衛生管理とは?

生鮮野菜や果物の栽培~出荷の各段階において、食中毒や感染症、異物混入などを未然に防止することを目的とした衛生上の管理のことです。衛生管理を的確に実施することで、消費者への安全な作物の提供や、作業にあたる農業従事者の安全管理などに役立てることができます。

農業において衛生管理が必要な理由

圃場において衛生管理が不十分だと、作物を買ってくださる消費者の皆さんに安全な商品をお届けすることが難しくなります。食中毒による事故が起こると、消費者に健康被害が発生し、原因となった食品や栽培農家への信頼が失われて、売り上げが一時的に落ちるばかりでなく、事故の情報が広がることで信頼を回復させるために時間がかかり、経営的に大きなダメージを受けてしまいます。

農業における汚染の原因

農場において衛生管理上、汚染の原因となるものは、病原菌による微生物汚染・農薬や化学薬品による化学的汚染・異物による物理的汚染の3つに大別されています。

種類 汚染の原因 汚染が発生する要因
微生物汚染 病原性大腸菌・サルモネラ菌・カビなど 有機肥料・水・作業者・ネズミ・鳥・家畜など
化学的汚染 農薬・化学薬品・油など 置き場所や使用方法などの不適切な管理
物理的汚染 刃物・プラスチック・砂・ガラス片など 作業者の身だしなみ・作業場の不適切な管理

農場における各々の衛生管理

堆肥の衛生管理

家畜糞堆肥(動物質堆肥)を衛生的に使用するには、十分に発酵させることが大切です。堆肥を作る際は、籾殻やおが屑などの副資材の利用や定期的な切返しを行い、堆積物の内部の温度を温度計で測定し55℃以上の状態が3日間以上続いていることを確認してください。熟成したかどうかの目安としては「1.色が褐色から黒褐色になっている」「2.家畜糞の臭いがほとんどなくなっている」「3.手触りがサラサラしている」などです。3つのポイントが確認できない場合は、土壌への施用から野菜の収穫までの期間を、土から離れた作物では2ケ月以上、土の近くまたは土がつく作物では4カ月以上を空けて収穫すると良いとされています。

農業の器具・道具の衛生管理

収穫時や運搬時に菌が作物に付着してしまう可能性がありますので、収穫から出荷にかけての作業を行う際に使用する器具や道具類にも適切な衛生管理を行う必要があります。収穫バサミやナイフなどには、病原菌が付着しているかもしれませんので、作業が終了したら当日中に洗浄し定められた清潔な場所に保管するように注意しましょう。必要に応じてアルコールや塩素系の消毒液で消毒すると良いでしょう。

収穫用のコンテナは、あくまでも収穫物を入れるコンテナとして、植物の残渣や収穫バサミ・ナイフなどの道具を入れるコンテナに流用しないようにしましょう。これらコンテナも定期的に洗浄し、破損がないか確認するようにしましょう。土にも菌が潜んでいる可能性がありますので、収穫用のコンテナや出荷用のダンボールは地面に直接置かず、シートやパレットなどを利用するようにしましょう。長期間使用しない農機具・コンテナ・ダンボールなどは、土やホコリがかからないようにカバーで被覆して保管することが大切です。

また運搬用トラックの荷台などは定期的に洗浄するようにしましょう。1台の軽トラックを流用する場合は、荷台の汚れを保護するための荷台保護シートを使い菌の移動を防ぐような手段を取るようにしましょう。

※洗浄に使用する水は、水質検査で安全性を確認した水を利用することが望ましいとされています。

農作業者の衛生管理

作業に入る前とトイレの後は手を良く洗い、農薬や肥料などで汚れた衣服のままで収穫や調整の作業を行わないようにしましょう。そのためには、圃場でも清潔な水が使えるように、タンクやボトルなどで清潔な水を持ち運ぶといった対応が、場合によっては必要になります。また異物混入の事故を防ぐためにも、飲食や喫煙をしながら作業を行わないことや、調整作業時には、帽子やエプロンなどを着用してアクセサリーを身に着けたまま作業にあたらないようにしましょう。

水の衛生管理

灌水や薬剤散布などの希釈水に利用する水が、河川やため池の地表水や地下水の場合は、その水路が動物の糞や家畜糞堆肥などで汚染されていることがないか、定期的に観察するようにしましょう。作物を洗浄するなどの調整作業においては、水道水や保健所が飲用に適していると認めたものを使用することが望ましいとされています。

農業の衛生管理におすすめ|オゾン散水器

圃場の衛生管理に役立つツールとして皆様へおすすめしたいなのが、手軽にオゾン水をつかって圃場の衛生管理を行うことができるオゾン散水器です。水道水があればスイッチを入れるだけでオゾン水を生成し、菌の増殖を抑制したり、臭いを抜き去ったりすることができます。オゾン水は厚生労働省により食品添加物としての指定を受けており、調整作業において菌の増殖を抑制するために使用することが可能です。オゾン散水器を使用して、ハサミ・ナイフ・コンテナといった道具類や、軽トラックの荷台などの洗浄を行うことで、圃場における菌の増殖を抑制する効果が期待できます(オゾンはゴムを劣化させるので注意してください)。

信頼獲得につながる農場の衛生管理を推進しよう

衛生的で安全そして安心な農産物を提供することができれば、卸売業者や消費者から信頼を獲得することができ、それが安定した農業経営のメソッドになるのではないでしょうか。それぞれの生産段階において、組織的な衛生管理が徹底できるような管理指針策定に本コラムをお役立ていただけましたら幸いです。

今回のコラムは農林水産省が作成した生鮮野菜を衛生的に保つためにを参考に作成しました。

関連コラム:食中毒防止と鮮度維持に役立つ出荷前の野菜洗浄とは?

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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