灰色カビ病とは?
灰色カビ病は、ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)という糸状菌(カビ)によって引き起こされます。弱った花弁や傷んだ組織を足がかりにして発生し、その後、胞子が風に舞って周囲に広がる空気伝染性を持っているため、施設内ではまん延しやすいという傾向があります。感染スピードは速く、薬散を繰り返すと耐性菌が発生する可能性があり、施設内で多発するとその後の対策が難しくなります。
灰色カビ病の病原菌は生きた植物だけでなく咲き終わった花がらや傷んだ葉でも活発に繁殖し、咲き終わりの花がら、落ちた花弁、切り口、枯れ込んだ葉なども菌の温床となります。一般に糸状菌は温度20~30℃、湿度60~80%の環境で活発になることが知られており、施設内はまさに病気が広がりやすい環境であると考えることができます。
灰色カビ病によるバラの被害
病害はバラの施設栽培では開花期に花弁やつぼみに発生しやすいという傾向があります。被害の中心は花とつぼみで、シミや褐変、腐敗、灰色のカビの発生により見た目が大きく損なわれます。
花・つぼみの症状
初期は花弁に水がしみたような小さな斑点ができます。花が変形したり、部分的に変色したりするなど、商品価値は著しく低下し、病気が進行すると花弁は褐色に変色して腐敗します。つぼみが侵させれると全体が灰色のカビ(胞子)で覆われ、開花できなくなることがあります。農研機構の病徴の写真 がわかりやすいかと思いますので、参考にしてみてください。
葉・茎の症状
葉では葉縁や葉面に灰褐色の病斑が出て、進むと葉枯れや落葉につながります。茎は傷口から侵入されやすく、採花後の切り口や剪定痕、擦れた部分などが起点になります。侵入すると褐変が広がり、腐敗して茎が弱り、上部のしおれや枯死につながる場合があります。
灰色カビ病の発生しやすい条件
病原菌(ボトリチス菌)は高い湿度、日照不足などの条件で活発になります。梅雨や秋雨のように雨や曇天が続く時期は注意が必要です。ビニールハウスでは、晴れていても昼夜の温度差により結露が発生したり、換気が遅れた影響で湿度がこもったりするなど、灰色カビ病にとっては好条件が揃います。また、剪定が遅れ枝葉が混みあうと樹冠の湿度が下がらなくなり、病原菌の発生を助長します。
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灰色カビ病の対策
灰色カビ病は発生後に“元に戻す”ことが難しいため、施設内の湿度管理と衛生管理を中心として「発生を抑制する仕組み」作りが重要です。予防の大きな柱は2つで「①湿度を下げる」「②感染源を残さない」ことです。
① 湿度を下げる
結露を抑えた換気
湿度対策は、単に換気を増やすだけではなく、花や葉が乾く時間を確保する発想が重要です。昼夜の温度差が大きいと、施設内に結露が発生しやすくなります。特に朝の立ち上がりで結露を早く切る必要があり、昼近くなっても花びらや葉に水滴が残る場合は、施設内の換気が足りていません。葉からの蒸散により施設内の湿度は高くなりますので、灌水の時間が遅くなると蒸散の時間も後ろに遅れて、日の入り後の内外温度差による結露の発生を助長することになります。また、施設内ではどうしても局地的に湿度が高い場所が発生しますので、循環扇や換気扇を用いて湿度の偏りを減らすことが大切です。
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通気を考えた剪定
株間を確保し、仕立てで内側の込み合いを減らすと、花や葉が乾くまでの時間が短くなります。灰色カビ病にとっては湿度が高い環境ほど有利なので、乾きやすい樹形はそれだけで予防効果が期待できます。不要枝や込み枝の剪定、下葉かきで通風と採光を確保します。特に花が付く位置の周辺に空間を作ると、花弁が乾きやすく、胞子が定着しにくくなります。
② 感染源を残さない
花がらや枯れ葉の除去
咲き終わりの花(花がら)や落花弁、枯れ葉・枯れ枝は、灰色カビ病の主要な増殖源になりやすいため、見つけたら即時除去します。特に花がらは、湿気をためて菌が増えやすいので、摘み遅れが続くと施設内の菌密度の上昇を手助けすることになります。回収物は施設外に持ち出し、適切に処分します。通路脇やハウス内の片隅に置くと、そこが胞子の供給源になり、再汚染につながるため、回収から処分までを一連の作業として固定化するのがコツです。
道具の消毒
手袋やハサミは作業中に何度も触れるため、発病部位に触れた後は簡易的に拭き取りや交換を挟むだけでも違いが出ます。剪定バサミからの伝染を防ぐためには、1株ごとに消毒するのが理想的です
殺菌剤の薬散
殺菌剤を用いた防除は主流となっていますが、灰色カビ病の菌は耐性が発生しやすいという特徴があり、同一系統の殺菌剤を使い続けると、耐性菌や感受性の低下した菌の発生を助長する可能性があります。そのため、使用する薬剤のFRACコードを確認の上、ローテーション散布を実施する必要があります。
施設バラ栽培の湿度対策に|空動扇・空動扇SOLAR
灰色カビ病の原因となる多湿環境を防ぐためには、湿度管理と風通しの確保が重要です。空動扇&空動扇SOLARは、ハウス内を換気して湿度の上昇を抑制し、花弁や葉が乾きやすい環境づくりをサポートします。本体には形状記憶スプリングが組み込まれており、温度変化に応じて伸縮することで換気弁が自動的に開閉。電源を使わず自然の温度変化を利用して換気を促すため、朝の換気作業の負担軽減にもつながります。ハウス内にたまりがちな湿気や空気のよどみをやわらかく動かし、病害が発生しにくい栽培環境づくりをサポートします。
バラの灰色カビ病の発生を抑えて品質の高いバラを収穫しましょう
灰色カビ病は「高湿度」「感染源の滞留」「通風不足」が重なることで発生しやすくなります。施設栽培では昼夜の温度差による結露や換気の遅れにより湿度が高まりやすく、病気が広がりやすい環境になりがちです。そのため、防除は発生後に対処するよりも、湿度をためない環境づくりと感染源を残さない環境管理が重要だと考えることができます。日々の管理を積み重ねることで、灰色カビ病の発生を抑え、品質の高いバラの安定生産につなげていきましょう。






