ビニールハウスで結露が発生する仕組み
湿度と温度差がもたらす結露
結露は温度の高い空気が冷やされたときに、空気中の水分が水滴として現れる現象です。ビニールハウスの内部と外気との温度差や、夕方から夜間にかけて急激にハウス内が冷やされる影響で結露やモヤが発生します。空気は温度が高いほど飽和水蒸気量(内部の含む水蒸気の量)が増えるという特徴があります。温かい空気が急激に冷やされると、飽和水分量は少なくなり、空気中に含むことができなくなった水分が結露として現れます。外気との温度差が大きいほど、暖かい空気と冷たい空気の接点となるビニール面で飽和した水分が結露の形で表れやすくなるのです。
換気不足による湿気の滞留
ビニールハウスの換気を適切に行わないと、空気が滞留した状態が続き湿度が高まるため、結露が発生しやすくなります。特に、天窓が付いていないハウスでは天井に熱だまりが発生したり、湿気がこもりやすくなったりする影響で、結露の発生が集中する傾向があります。
地面からの蒸散
地中に含まれている水分量が多く地温が高いと、蒸散量が多くなりビニールハウス内の空気中の水蒸気量が増える傾向があります。
結露がもたらすリスクと作物への影響
作物の品質が低下する
結露が落下する“ボタ落ち”は作物の品質低下や病気発生につながり、収量が低下する原因となります。ボタ落ちが作物に直接かかる状態が続くと、水斑や腐敗が起きやすくなり、果菜類や葉もの野菜では見た目が悪く商品価値を低下させる要因となります。
病気の発生リスクが高くなる
結露が発生している状態のハウスでは、植物の葉を濡らす原因となります。長時間湿ったままの状態が持続すると、病原菌の繁殖が進み、病気の発生リスクが高まります。高湿度状態のハウスでは、灰色かび病やべと病などを発生しやすいことが知られており、収量減といった深刻な問題につながる可能性があります。
ビニールハウスの結露対策
換気(換気扇や循環扇)
換気を怠ると、湿気が内部にこもり結露が発生します。特に、ビニールハウスの天井は空気の滞留が生まれやすく、温度差も大きくなるため、結露が発生しやすい部分です。十分な換気を行うためには、開閉式サイドや天窓の活用、循環扇の導入も検討してみましょう。天長部を換気するためには天窓が効果的ですが、設置費用が高いという点がデメリットです。
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断熱(内張りカーテン)
ビニールハウスの内部に二重構造を作ることで、外気との温度差を小さくし、結露発生を少なくすることができます。たとえば、内張りカーテンを追加するだけでも空気の断熱層が形成され、ハウス内の保温効果が高まります。
ボタ落ちしにくい被覆資材
防止策としてはボタ落ちしにくい流滴フィルムの利用や、水滴を排水できる資材の活用が効果的です。併せて、ハウス内を定期的に巡回して結露が溜まる場所を特定し、必要に応じて部分的な対策を講じることも重要です。
加温機
送風ヒーターなどで空気を温めて飽和水蒸気量を増やして、結露を発生しにくくする方法です。循環扇や換気扇、除湿機など併用するとさらに効果が高いと考えられています。ランニングコストとして燃料代や電気代が発生する点がデメリットです。
マルチ
フィルムマルチや敷き藁で地表面からの水分の蒸発を抑えます。
フィルム止め材
被覆フィルムをパイプに止める部材で、ハウスの肩部や谷部に取り付けることで水滴を集約し排水する役割を持つ製品があります。結露が集まりやすい固定部に水切れの設計がされており、水がフィルム面を流れ落ちることで、ボタ落ちを防止します。
ビニールハウスの結露対策におすすめの換気扇|空動扇
空動扇/空動扇SOLARは、風や太陽の力でベンチレーター(換気装置)が回転しビニールハウスの天井にたまる熱だまりを排出します。内蔵された形状記憶スプリングがハウス内の温度変化により伸縮して換気弁が開閉される仕組みです。無電源で駆動するため、電源がないビニールハウスでも使用することができます。一度、開閉温度を設定してしまえば、自動的に換気弁が開閉するため、結露を防止し農作業を軽減することができます。複雑な機械ではないため、簡単に設置することが可能です。
最適な結露対策で安定した栽培環境を整えましょう
結露を防ぐためには多面的な対応が必要です。対策が十分に行き届くと、病気リスクの低減、作物の品質維持、効率的な作業環境が得られやすくなります。ハウスごとの状況に合わせた柔軟な対策を継続的に実施し、安定した収量と高い品質を得るための基盤を整えていきましょう。
コラム著者
セイコーステラ 代表取締役 武藤 俊平
株式会社セイコーステラ 代表取締役。農家さんのお困りごとに関するコラムを定期的に配信しています。取り上げて欲しいテーマやトピックがありましたら、お知らせください。