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さくらんぼ栽培における肥料とは?最適な肥料をご紹介します
公開日2023.03.28
更新日2023.03.30

さくらんぼ栽培における肥料とは?最適な肥料をご紹介します

赤い実が印象的なさくらんぼ(サクランボ)は日本では主に生食用として利用されている果樹で山形県が主要な産地になっています。さくらんぼは果樹の中でも栽培難易度が高い部類に入りますが、環境条件さえ整えれば栽培可能な植物です。今回のコラムではさくらんぼ栽培のポイントと最適な肥料をご紹介します。本コラムがお役に立ちましたら幸いです。

さくらんぼの基礎知識

さくらんぼ(学名:Prunus spp. 英名:Cherry)は桜桃(おうとう)とも呼ばれ、バラ科・サクラ属に分類される植物です。大きく3種類(甘果オウトウ、中国オウトウ、酸果オウトウ)に分けられ、日本で主に栽培されているのは甘果オウトウです。さくらんぼの原産地は西アジアとされ、栽培の歴史は古く、ヨーロッパでは有史以前から栽培されていたようです。

日本では山形県が全国生産量の70%以上を占めている主要産地となっています。なぜ山形県の生産が盛んであるかというと、霜害が少ないこと、ちょうど収穫時期にかかる梅雨時期の降水量が少ないためさくらんぼの実が濡れて腐ることが少ないこと、台風被害が少ないこと(さくらんぼの樹は風で倒されやすい)等が挙げられます。

さくらんぼの分類と特徴

甘果オウトウ

学名:Prunus avium L.
和名:セイヨウザクラ
原産地:イラン北部、コーカサス山脈南部からイタリア、スペイン

甘味が強く、酸味が少ない。生食向き。例:佐藤錦、アメリカンチェリー
中国オウトウ

学名:Prunus pseudcrasus Lind.
和名:シナオウトウ、カラミザクラ
原産地:中国

小さい果実がなり、主に観賞用として植木として利用されている。
酸果オウトウ

学名:Prunus cerasus L.
和名:スミノミザクラ
原産地:黒海沿岸~西部アナトリア(小アジア)付近

酸味が強く、甘みが少ない。ケーキやお菓子などの加工品の材料として適している。

さくらんぼの育て方のポイント

栽培に手間がかかる

さくらんぼは作業(整枝剪定、受粉、摘果、など)を適切に行っていく必要があるため、他の果樹よりも栽培難易度が高いです。また苗木から育てる場合、実をつけるまでは3年ほどかかります。

栽培適地を把握する

冷涼な気候

年平均気温が7℃から12℃の冷涼な気候が適地です。

降水量が少ない

降水量が多いと結実不良等が発生するため、4月から9月の降水量が600mmから700mm前後と雨が少ない地域が適地です。

排水性の良い土地

さくらんぼの根は過湿に弱いです。そのため排水性と通気性が良い土地が適しています。耕土が浅かったり、地下水位が高い場所での栽培はおすすめできません。排水性のわるい土地の場合は客土や盛り土をしたり、溝を掘って対策する必要があります。

手間のかからない樹形に整える

さくらんぼの仕立て方は「立ち木仕立て」「垣根仕立て」「棚仕立て」の3つがあります。樹形は樹齢と共に変化させるのが一般的です。手間のかからない作業のしやすい樹形、毎年安定して品質の良い果実が収穫できる樹形を目指して整枝剪定をしていきましょう。

適切な受粉を行う

さくらんぼの品種は自家不和合性であることが多いため、1品種だけでは結実しません。そのため和合性のある受粉樹を混植したり、花粉媒介昆虫(マメコバチ、ミツバチ、マルハナバチなど)を利用したり、人工受粉をする必要があります。人工受粉の場合は採取した花粉は薬包紙に包んで冷凍保存ができるので便利です。

病害を抑える

さくらんぼは灰星病、褐色せん孔病、炭そ病といった病気が発生します。ICボルドーや石灰硫黄合剤などの薬剤散布が基本となります。

鳥害を抑える

さくらんぼの果実は甘くて美味しいため、ヒヨドリ、ムクドリ、スズメ等の鳥害が多いです。防鳥網の設置が最も効果的な方法です。目合い20mm程度の防鳥網がおすすめです。

関連コラム:
鳥害対策の方法を詳しく解説
畑の鳥害対策について|鳥害の実態や鳥害対策方法を解説

鉢植えで室内に飾ることも可能

さくらんぼは鉢植え(ポットチェリーとも呼ぶ)することで室内に飾ることも可能です。花束状短果枝のついた枝を接ぎ木することで1年目でも結実させることができます。接ぎ木はコツが必要ですがチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

さくらんぼの施肥時期と成分施肥量

さくらんぼにとって生育促進や開花結実を促すために肥料を与えることはとても大切です。肥料には有機質肥料化成肥料、微量要素肥料などさまざまですが、本章では主に各都道府県における化成肥料の施肥情報を以下に記載します。

地植えの場合

山形県農林水産部より公開されている施肥基準によると、9月下旬から10月上旬に元肥を年間施用量の80%施し、残りの20%は収穫後にお礼肥として施します。元肥は貯蔵養分を蓄えるために行い、お礼肥は消耗した樹体回復と花芽を充実させるために行います。

山形県のさくらんぼの施肥時期・成分施肥量(成分kg/10a)

品種 畑地 施用時期 窒素 リン酸 カリ

佐藤錦

紅秀峰

元肥 12 5 10
お礼肥(7月) 3 1 2
合計 15 6 12
畑地(やせ地) 元肥 9 4 7
お礼肥(7月) 3 1 2
お礼肥(8月) 3 1 2
合計 15 6 11
  元肥 12 5 10
お礼肥(7月) 8 3 6
合計 20 8 16

令和元年6月 農作物の施肥基準 山形県農林水産部

他県の施肥基準は以下のリンク先をご参照ください。

・青森県:特産果樹栽培指導要項(平成27年改訂版)
・岩手県:県農作物施肥管理指針(改定後)
・福島県:作物別施肥基準
・群馬県:作物の施肥基準
・長野県:長野県施肥基準

鉢植えの場合

10月中旬に1回、緩効性肥料と有機質肥料が混ざったものや花木・果樹用の肥料を1回10g程度を苗木の根元周りに施用します。また5月下旬から6月中旬の収穫後の追肥も有効です。

さくらんぼ栽培に最適な肥料「オルガミン

新鮮な魚を丸ごと糖蜜と一緒に天然発酵させた天然アミノ酸入り複合肥料です。1,000倍に希釈し収穫前まで農薬と混用散布することで、葉の状態向上(立ち具合、色)、うるみ果減少、玉肥大向上、食味向上、日持ち向上という効果が期待できます。収穫後の薬散(お礼肥)にも混用散布をおすすめしております。ボルドー散布の際にも混用可能です。ただし石灰硫黄合剤との混用はお避けください。

▶オルガミンの説明動画はこちら

さくらんぼ栽培を楽しみましょう

さくらんぼは見た目がきれいな果実ですし、贈答用としていつの時代も人気の果樹です。初心者の方でも鉢植え栽培であれば地植えよりも管理はラクなのでぜひ栽培にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。本コラムがお役に立てれば幸いです。

さくらんぼ栽培における肥料とは?最適な肥料をご紹介します

コラム著者

満岡 雄

2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Twitterを更新していますのでぜひご覧ください。

 

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