食中毒の原因とは?
腐ったものを食べると食中毒になると考えがちですが、厳密には腐った食べ物に付着していた細菌(やウイルス)を体内に取り込み、細菌自体または細菌が増殖する際に作り出される毒素により食中毒症状が引き起こされます。実は腐ったもの自体が悪いわけではありません。腐った食品でも人が食べても害がないものに発酵食品があります。代表的なものとしては、塩麹・酢・味噌・漬物・醤油・納豆・チーズ・ヨーグルトなどです。これらは細菌の増殖により発酵作用が引き起こされ作られる食べ物ですが、食中毒症状は引き起こされません。つまり同じ作用でも、人が食中毒になる細菌と、ならない細菌があり、この点の違いにより「発酵」か「腐敗」を人の目線で区別しているだけです。食中毒を引き起こす細菌としては、腸管出血性大腸菌・黄色ブドウ球菌・サルモネラ菌・リステリア菌・カンピロバクター菌など、ウイルスではノロウイルスなどがあります。
生鮮野菜に細菌が付着する原因
原則としては野菜に細菌が付着しなければ、問題はないのですが、農産物を栽培するいずれかの過程において、汚染源となるものがあります。汚染される段階としては、圃場での生産段階・収穫後の加工や調整の段階・流通段階のいずれかで、具体的な感染源は、土壌・水・堆肥・廃棄物・作業者の手・収穫カゴ・運搬カゴ・農業機械(農業道具)・害獣などです。圃場に関係するものとして細菌が生息している場所は、主に以下の通りですが、これらの病原菌が作業者の手・農(機)具・収穫カゴ・運搬カゴを介して、農産物に菌が付着する可能性があります。例えば土汚れのついた耕耘機が移動する際などにも、菌が一緒に移動していくことがあります。
土壌
もともと土の中にはたくさんの細菌が存在しており、また、圃場の土には灌水で水がまかれたり、動物質および植物質の堆肥がすき込まれたりしますが、これらの水や堆肥にも細菌が存在しています。食中毒を引き起こす細菌が発生していれば、野菜に土が付着していることで汚染される可能性があります。
水
農作物の栽培には欠かせないもので、灌水・希釈水・洗浄水などで大量に使われます。水源は、井戸水・河川水・水道水などがありますが、コスト面から主に井戸水や河川水などを利用されている農家さんが多いのではないでしょうか。土と同様に井戸水や河川水にはもともと細菌が存在していますが、人為的な汚染が原因であったり、もともとの帯水層に生息していたりと、原因をつきとめることが難しく、井戸水や河川水が汚染の原因となることもあるとされています。
家畜糞堆肥
動物の腸管の中には、人が食中毒を引き起こす細菌(微生物)が生存しているため、家畜糞堆肥を圃場に施用した場合に、有害な細菌が土壌に残りやすくなります。特に十分に発酵されていないものを施用すると増殖しやすいとされています。堆肥化する際の発酵熱で細菌は死滅しますが、十分に完全に死滅させることは困難です。
害獣
細菌(病原微生物)も持ったアナグマ・アライグマ・イノシシ・カラス・タヌキ・ネズミ・ハクビシンなどが圃場へ侵入し、野菜や土などが汚染される場合があります。動物由来の人獣共通の感染症もあることから注意が必要です。
出荷前の野菜洗浄のメリットとデメリット
このように野菜の生産段階において、野菜が汚染されている可能性があるために、食中毒の防止のため、出荷前の野菜洗いを行う場合があります。とりわけイモ類、根菜類や葉物野菜などは、消費者における泥付き野菜の敬遠も考慮され、洗浄するケースが少なくありません。野菜洗浄は腐敗菌を除去することから鮮度維持の効果も期待できます。本章ではメリットとデメリットについてご紹介します。
メリット
野菜の鮮度が維持しやすい
野菜の腐敗を進める菌の増殖を防ぎ、保管中や輸送中の劣化が進みにくく、鮮度の良い状態で流通させることが可能です。ただし、野菜の種類によっては洗浄することで菌を蔓延させる結果となるので注意が必要です。
食中毒を起こす細菌が増えにくい
厳密には、食中毒を起こす細菌(微生物)と野菜を腐らせる細菌(微生物)は種類が違いますが、洗浄作業を行うことで、悪影響を与える細菌(微生物)は減らせるとされています。ただし、完全に除去することはできません。
デメリット
手間がかかる
収穫・調整に費やされる時間は野菜の種類にもよりますが全体の4割にのぼるとのデータもあり、洗浄作業は1工程増える為、時間やコストが増加することになります。また洗浄にあたり、作業者の健康管理や衛生管理なども行う必要があります。衛生管理上、流水洗浄時には水道水か保健所が飲用可能だと認めた水を使用することが望ましいとされ、コスト増加につながります。
水が切れていないと腐りやすくなる
洗浄後に野菜の水が切れていないと、その水が原因で多湿環境を作り出すこととなり、菌の増殖を促し野菜の腐敗が進みやすくなります。たとえばトマトは果実とヘタの隙間に水が残りやすいので、水を得たカビ菌が増殖しやすくなるので注意が必要です。
傷が付くと傷みやすくなる
乾拭きやブラッシングで力を入れすぎると、傷がついてしまい、その傷が原因で野菜の製品価値がさがったり、傷から菌が侵入し腐ったりします。野菜を傷つけないように注意して作業にあたる必要があります。
鮮度維持と食中毒抑制をするオススメのオゾン水資材
オゾン散水器は、0.3~0.7 mg / L(水温20℃時)のオゾン水を手軽に生成できる資材です。水道蛇口にワンタッチのカプラーをセットして、ホースとオゾン水散水器を繋げばいつでもオゾン水が生成できます。
オゾン水は食中毒の原因となる大腸菌やサルモネラ菌などの増殖抑制に効果を発揮し、腐敗の要因となる菌の活動を抑制して鮮度維持をする効果が期待できます。
調理工程におけるオゾン水の使用方法は、水道水感覚で野菜を洗浄するだけ。洗浄後にオゾン水を洗い流す必要はなく、そのまま調理に用いることができます。
出荷前の野菜洗浄で食中毒抑制と鮮度維持を
葉物野菜か根菜かといった野菜の種類や作業をする場所によって、野菜の洗い方に関するノウハウは異なるかと思いますので、取扱をしている品目ごとに手法を確立していく必要がありますね。。洗浄作業は食中毒の抑制と鮮度維持という点において重要な作業です。今回のコラムを活かし新鮮で安心安全な野菜作りにお役立ていただければ幸いです。
コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。