コラム
植物実験向けのLED電球をご紹介!!|赤色光、青色光、遠赤色光が植物に及ぼす影響
公開日2022.05.09
更新日2022.05.10

植物実験向けのLED電球をご紹介‼|赤色光、青色光、遠赤色光が植物に及ぼす影響

稀に存在するものを除き、ほとんどの植物は光合成を行います。植物は太陽光の光エネルギーと根から吸収する水を利用して光合成を行い、酸素や有機化合物を合成します。また、植物は日の長さ(日長)に影響されて花芽分化をし、それは植物の種類によって異なります。
あるいは、光の色(波長)によって生長効率(植物の成長)や植物外的要因(病害虫)に影響を及ぼす、補償点や光飽和点の違いによる光の強さも植物によっていろいろです。
本コラムでは特に、赤色光、青色光および遠赤色光LED電球が植物に及ぼす影響について紹介したいと思います。

LED電球の普及について

LED電球が一般家庭に普及したのは今から15年程前からとされており、少し間をおいて徐々に農業分野にもLED電球が使われるようになってきました。15年前というと筆者が農業や農学に関わるようになった頃です。当時の記憶ですが、農家の間で取り上げられるLED電球導入の話題は「補光用電球」への採用でした。たとえば促成イチゴ栽培では花芽分化を促進させる目的で、冬~春にかけて夜間に電照を焚き日長を確保します。ここで使用される光源は、当時は専ら白熱電球でした。白熱電球の光の見た目はもちろん白色ですが、この白い光には赤い光や青い光などが含まれています。白熱電球以外に選択肢がなかったといえばそうなのでしょうが、白熱電球には「短寿命・消費電力が大きい」という課題があり、「長寿命・消費電力が小さい」が特徴のLED電球は取って代わるには最良の状況だったと思います。

しかし、すぐにLED電球と入れ替わるには時期尚早でした。新たな課題が囁かれるようになり、1つの課題は「LED電球が高額だったこと」です。価格帯までは覚えていないのですが、LED電球が家庭用に普及してきたとはいえ当時は今と比較しても相当に高かったと思います。当然、白熱電球よりもLED電球は高額で、電照に投資する金額としてはあまりにも高いものでした。またもう一つの課題は「LED電球に白熱電球と同じ効果を得ることができるのか」でした。LED電球が普及してきた当時はニュース番組でも度々放送されていましたが、LED電球と白熱電球の発光の仕組みの違いを多くの人がタイムリーに知っていました。農家からすれば、植物への補光効果を不安視するわけで、「近隣の農家で上手くいったならば検討する」といった具合になかなか普及せず、農業生産におけるLED電球は徐々に普及してきたものの、15年後の現在においても普及が十分に進んだとは言い難い状況です。

植物に対するLED光の効果

生育との関連

結論からいうと「LED電球は白熱電球と同等以上の効果が見込める」ことです。その一つの要因に、LED電球は対象植物が必要とする光(波長)を工場生産の段階で任意に組み込むことが挙げられます。植物の生育に影響力が高い光領域は緑色~遠赤外線といわれています。この領域には、それぞれの植物が影響を受けやすい範囲が存在し、LED電球は対象植物が必要とする光をピンポイントで組み込むことができます。現在普及が進んでいる栽培植物はイチゴ、トマト、キクなどが挙げられます。

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昆虫との関連

本題とは反れてしまいますが、LED光は蛾やアザミウマなどの飛翔昆虫に対して影響を与えます。製品として普及が進んでいるのは、紫外線、緑色、黄色、赤色を利用した忌避や誘引に関するものです。昆虫によって反応がさまざまなので一概には纏められませんが、とりわけ知られているのは紫外線を利用したブラックライトによる誘引効果です。また、緑色LED光では夜蛾に対する忌避効果が、赤色LED光ではアザミウマに対する忌避効果が認められています。とくにアザミウマは薬剤耐性を獲得してきているので光反射シートなどを利用して圃場全体や葉っぱの裏側まで赤色LED光で照らすとより強い効果を得ることが期待できます。

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植物に対する赤色LED光の影響

多くの植物の花芽分化促進には赤色の波長が影響することが報告されています。たとえばイチゴでは白色の光を採用せず赤色の光のみを用いて夜間電照を行う農家もいます。また、キク、トルコギキョウ、パッションフルーツなどでも単色の赤色LED光を採用する事例があります。ある実験ではキクに対して赤色LED電球を24時間焚くとアザミウマ抑制に効果があることを報告しています。研究が進めば、生育と害虫抑制の2つの効果を同時に得られる技術が普及するかもしれません。

植物に対する遠赤色LED光の影響

開花促進には遠赤外光の影響が高いといわれています。たとえばスプレーギクやチンゲンサイで生育促進効果が確認されています。しかし、一般的に遠赤色LED電球は赤色LED電球よりも価格が高い傾向があり、最近で課題解決のためにカーネーションを用いて赤色光の効果を検討する研究が報告されています。

植物に対する青色LED光の影響

青色単色波長には殺菌作用があるといわれています。また、種子に対して発芽促進作用があるといわれています。しかし、生育促進効果については、実エンドウを用いた開花に関する研究で緑色~赤色の光源に対して青色は効果がなかったと報告しています。また、カーネーションの開花にも青色は影響を与えないとされています。光の三原色(RGB)に基づいて、たとえば青色LED電球と赤色LED電球を用いるとピンク色の光源を求めることができます。このように他のLED光と青色LED光を組み合わせることで何かしらの効果が期待できるかもしれません。

植物実験向けの単色LED電球

アグリランプ

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単色LED光源の照射で植物の可能性を引き出す

今日までに赤色LED光と遠赤色LED光は多くの研究によって取り上げられており、その有効効果が明らかにされてきました。一方で青色LED光の研究報告が少なく、今後の報告に期待がかかります。
昨今の施設園芸の普及によって、様々な植物種を栽培されるようになってきました。とりわけ日本各地で熱帯果樹栽培が熱を帯びてきましたが、温度の確保だけではなく日長や特定波長の確保も今後検討されてくるのではないでしょうか。

植物実験向けのLED電球をご紹介!!|赤色光、青色光、遠赤色光が植物に及ぼす影響

コラム著者

小島 英幹

2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の実践を始める。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。

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