スミちゃんB-1型を導入していただいた村田農産の村田和也さまから1月の終わりに電話をいただいた。「スミちゃんが新聞に掲載されたら問い合わせが殺到してしまったので、できるだけ早く運転指導に来てほしい」。当方は雪国の運転には慣れていないので、雪解けの春になったら運転指導に往訪する約束をしていたのだが、早く来てほしいと言われれば何とかするしかない。急遽飛行機のチケットを取り北海道へ飛んだ。
村田農産について
代表者 :村田和也さん
農園の立地:北海道滝川市
栽培植物 :水稲(ななつぼし):18ha
ムギ:11ha
ニンニク:1.3ha
スイートコーン:60a
ネギ:9a
主な販売先:JA
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【プレス空知】新十津川の村田農園が密苗栽培に挑戦 作業省力化に期待 2023/05/26
【北海道新聞】もみ殻を燃料、土壌改良材に 新十津川の村田農産、2月から製造 2024/01/15
スミちゃんの導入まで…
2022年3月に村田さんより最初のお問い合わせをいただきました。数度の見積書や資料のやり取りの後、事業再構築補助金に採択されて2023年11月にスミちゃんB-1型の導入に至っております。最初のお問い合わせ以降、弊社が現地に訪問することは今回が初めてでした。
真冬の北海道弾丸ツアー
北海道へは前職の時に何度も来たことがあった。千歳市、札幌市、江別市、函館市、北見市など10回近くは仕事に来ている。季節も関係なく、春も夏も秋も冬も全部の季節を体験している。何度来ても北海道は良いところなのだが、冬の記憶には危険が思い出される。札幌市内では車の運転中、左折時にアイスバーンにタイヤを取られてスリップして危うく路側に乗り上げそうになった。旭川市から札幌市にレンタカーで向かおうとしていたが吹雪のため高速道路が通行止めに、仕方なく旭川市で一泊した。
そのため村田農産での運転指導の時期も自分本位で雪解けの春を考えていたのだが、来てほしいと言われれば行くしかない。当方一人では色々と自信がないので、セイコーステラの代表武藤も一緒に参上する。羽田空港から飛行機を前乗りして旭川空港に降り、バスで旭川市内へ。運転指導当日は旭川駅から滝川駅に向かい、最寄りの滝川駅まで村田さんに迎えに来てもらった。
1年と半年の間、村田さんとはメールと電話で何度もやり取りをしてきたがお会いするのは初めて。滝川駅で電話をしながら駅舎でお互いを近距離で確認し合い、よくあるアレの瞬間だ。車で移動中に村田さんから教えて頂いたが今年は例年にない暖冬とのこと。道路の肌も露出していることはこの時期ほとんど無いそうだ。また、北海道は「みどりの食料システム戦略」に関心が高い地域とのことで、村田さん自身も北海道農業士やJGAPの資格を取得するなど未来の農業に関心が高い。
そうこう情報交換を行っているうちにスミちゃんの設置現場に到着した。納屋を新築してスミちゃんを設置すると聞いていたが、とても立派な建物で、スミちゃんB-1型も良いところに嫁いで幸せだろう。本日は村田さんだけではなく、滝川市やJAなどからも視察があると聞いていたので、スミちゃんの運転指導に滞りがないように少し早めに訪問させていただき準備を始める。
スミちゃんの運転指導
村田農産ではスミちゃんを使用するにあたりバネコンを使用せず人力で籾殻を投入することになっている。この場合は多少手間がかかってしまうが導入費用を安く抑えられる。またスミちゃんのスムーズな運転には「スミちゃんと籾殻の相性」が重要だ。籾殻は地域によって殻の厚みが異なっており、スミちゃんの燃焼炉内への空気の送りや籾殻の投入スピードなど使用方法が全国統一ではなく微妙に違う。今回もその説明を前置いてから運転指導を開始した。
スミちゃんの稼働方法
①ブロワー開閉口の調節とインバーター初期値
空気を燃焼炉内に送るブロワーの開閉口の隙間の調整を行います。隙間の大きさは2cmが目安で大体人差し指が入るくらいの隙間です。次に籾殻を入れてブレーカーを上げます。電源ツマミをONにして、その後インバーターを調節して2Hzに合わせます。インバーターを0より大きくするとスクリューが回転して籾殻を燃焼炉内に送りますが、インバーターの数値が大きいほどスクリューの回転が早くなります。
電源:ON
インバーター値:2Hz
ブロワー開閉口:2cm
②籾殻の点火方法
籾殻点火口まで籾殻が送られてきたら、一度電源をOFFにします。籾殻点火口に300ml程度の灯油をかけ、ライターやチャッカマンなどを使用して点火します。点火後は暫く電源をOFFのままにしておきます。火が籾殻点火口周辺に広がるまで待ちます。炎は20-30cmほど上がります。待ち時間は大体2分程度です。火が広がったら籾殻点火口に蓋をして、電源をONにして、再び2Hzで稼働させます。暫くすると点火した籾殻が燃焼炉内に送られて、次第に炎が大きくなります。
電源:ON→OFF→OF
インバーター値:2Hz
ブロワー開閉口:2cm
③燃焼炉で炎を大きくする
燃焼炉に燃えている籾殻が送られると次第に炎が大きくなってきます。この時、籾殻が湿っている、籾殻の厚みがある、ブロワーの開閉口が狭い、インバーター値が大きく籾殻の送りが早いなど、うまく調整がかみ合わないと炎が大きくなりにくいです。炎が大きくならない場合はまずはブロワーとインバーターで調整を行います(下記参考)。これでもうまくいかない場合は、再び電源をOFFにして籾殻の点火(②)からやり直します。
インバーター値は2Hz→3Hz→4Hz→5Hzと1Hzずつ上げていきます。同時にブロワー開閉口をmm単位で少しずつ狭くしていきます。場合によってはインバーター値を上げながらもブロワー開閉口を狭くしないなどの対応が必要です。このような操作を行って、スミちゃんと籾殻の相性を見ながら最も効率の良い燃焼状態を探します。
籾殻の燃焼が良い状態のときは、燃焼炉内で籾殻が舞うようになります。また、燃焼炉内の温度は温度計で確認できます。何℃のときに最も効率良く籾殻を燃焼できるかを覚えておくと、次からの稼働のときの目安になります。
電源:ON
インバーター値:2Hz→3Hz→4Hz→5Hz(調整によっては7Hzまで)
ブロワー開閉口:2cm → 数mm
④籾殻燻炭の回収
籾殻が燃焼炉を通過すると、籾殻燻炭が出来上がります。最初に燃焼炉に入った籾殻ほど生のままですが、徐々に生焼けが減っていき、燃焼がうまくいっていれば連続して真っ黒な燻炭ができあがります(写真は別現場)。白色のシリカが出来てしまうときは燃焼温度が高すぎます。インバーター値とブロワー開閉で調整して温度を下げてください。
籾殻燻炭の回収は立ち上がりスクリューで行います。立ち上がりスクリューは高温の籾殻燻炭を冷ます役割と、フレコンなどへの効率的な籾殻燻炭の回収を助ける役割があります。
電源:ON
インバーター値:③に準ずる
ブロワー開閉口:③に準ずる
滝川市における籾殻燻炭の現在位置
滝川市では「みどりの食料システム戦略」に積極的に取り組んでいるとのことだった。とりわけ籾殻燻炭に注目しており、フィールドへの施用効果を検証しているそうだ。また村田農産では2024年度はスミちゃんで製造した籾殻燻炭を使って、普及センターと共同で水田での籾殻燻炭の施用効果を検証するとのことだった。さらに村田さんによると籾殻燻炭は融雪剤の代替として利用価値があるそうで、滝川市では正にみどりの食料システム戦略への積極性がみられた。
以前はJAなどで籾殻燻炭を製造する取り組みがあったそうだが、作業員が付きっきりになってしまい労働者の配置に課題があって現在は行われていない。今回、滝川市にスミちゃんを導入して様々な取り組みが行われるが、もし軌道に乗ればスミちゃんB-1型の籾殻燻炭の製造能力では全く足りないとのことだった。
おわりに
今回のスミちゃんの運転指導の所要時間はおよそ90分でした。大人数に解説を行いながら進行したこともありますが、90分は比較的標準的な所要時間です。籾殻が十分乾燥していない場合は点火に時間がかかってしまい、灯油の消費量も増えてしまうので、運転指導をご希望の方は乾燥した籾殻をご準備ください。
村田農産から旭川空港までの帰路は親切にも村田さんに車で2時間の道のりを送っていただきました。道中に村田さんお勧めのお店で昼食をとることになりましたが、到着すればなんと、、、あの有名な松尾ジンギスカン!しかも本店!!弾丸ツアーで全く何も考えていなかった我々にとってこの上ないサプライズでした。村田さん、ありがとうございました!!
コラム著者
小島 英幹
2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法など。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の研究に着手する。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。