北海道浦幌町の特産品を出品したフェアが東京交通会館で開催されると有限会社橋枝物産の橋枝俊英さんからお誘いをいただいた。橋枝物産には2023年2月にグリーンキーパーを導入していただいている。交流を深めるべく、またグリーンキーパーの効果をお伺いしに有楽町に向かった。
橋枝物産からイベントのお誘い
2023年2月にグリーンキーパーを導入して頂いた有限会社橋枝物産の橋枝俊英さんから、12月上旬にLINEが入った。「十勝浦幌町のおいしい恵み」。有楽町にある東京交通会館で12月9日と10日にイベントを開催する内容だ。筆者自宅の最寄駅から電車の乗り換えなしで東京交通会館まで行くことができ、北海道や沖縄県のアンテナショップが入るそのビルにはしばしば足を運んでいる。最近はチョコレートで有名なGODIVAがゴディパンというベーカリーショップを展開しているが人気がありすぎて全く買える気配がない…。
筆者が東京交通会館へ行くときは大体が会社の休日の土日だが、殆ど必ずマルシェが開催されている。お誘いを受けた時にはすぐにピンときたしイメージし易かった。
十勝浦幌町のおいしい恵み in 東京交通会館
12月10日、有楽町駅前の広場では北海道別海町ファン感謝祭り2023が開催されていてとても賑やかだった。ホタテと牛乳の試食ができるとあって行列ができている。筆者もホタテをゲットすることができた。えっと思うような大振りサイズでいまどき珍しい大盤振る舞いのホタテはバターの味がしてとても美味しかった。
この広場に隣接して東京交通会館が建っている。今日もいつもと変わらずマルシェが開催されていて10店舗位が出展していた。浦幌町のブースは有楽町駅前広場から銀座マロニエ通りに繋がる道沿いに設営されていて、特に人通りが多い一等地だった。青空色の法被を着た賑やかで活気のあるメンバーの中に橋枝俊英さんがいて直ぐにわかった。実は、グリーンキーパーを導入していただいた翌週に橋枝さんとは神奈川県の大船駅でお会いして小一時間ほど交流を深めている。お会いするのはそれ以来9カ月ぶりだ。販売の対応をされていたので少し間を置きつつ商品を眺める筆者。対応を終えた橋枝さんがすぐに気が付いてくれた。
グリーンキーパーの効果は如何に!?
橋枝物産は今回のフェアでタマネギを出品していた。飛行機の機内食にも採用された実績のあるタマネギだ。炭を使った土づくりで減農薬栽培されたタマネギはオレンジ色の保護葉が薄いのが特徴とのこと。農薬が多いと保護葉が厚くなるそうだ。一玉掴んでみるとずっしり重くて張りがあった。保護葉もスーパーで売っているものよりも明らかに薄く、肥厚葉が透けて見えている。こんなに良いタマネギが東京の真ん中で詰め放題できるとは!
タマネギの隣にジャガイモがある。キタアカリとレッドムーンだ。橋枝物産ではグリーンキーパーをジャガイモの保存に使用しているので、さてはこれがそうだなと橋枝さんに伺うと、「これは違うやつです」。別の出品者さんのジャガイモとのことで、橋枝物産は今回はタマネギだけの出品だった。しかし気になるので、グリーンキーパーのジャガイモへの効果はどうですかと伺ったところ、「しわができてしまうものもありますが概ね調子は良いです」と言っていただいた。しかしやっぱり現物がみたいので浦幌町まで出張に行くことを考えたい。
「おやさいくれよん」と食料廃棄問題
浦幌町は帯広と釧路のちょうど真ん中くらいに位置しており、畑地と丘陵の面積が大きく、海にも面した自然豊かな地域だそうだ。特産品はジャガイモ、タマネギ、牛乳、黒毛和牛、鮭などが有名でふるさと納税にも採用されている。今回のフェアにもそれらから代表的な特産品がラインナップしていたわけだが、とりわけ気になった商品があった。「おやさいくれよん」。おやさいくれよんは浦幌町の規格外野菜で作られているSDGs製品で、子供が口に入れても大丈夫だと、十勝うらほろ樂舎のメンバーで企画開発に携わった溝口明子さんが教えてくれた。
平成29年産の日本の野菜41品目の収穫量1334万トンのうち出荷されたのは1141万トンで、出荷されなかった193万トンの多くは廃棄されたそうだ1)。農家経験のある筆者も常々考えるが、ちょっと傷ついている、形が悪い、虫に少し食われた、農産物は加工食品と違って規格で生産できない。天候に大きく左右され、休みなく管理した中でやっと収穫した野菜が曲がっていたから出荷できません(お金になりません)は腑に落ちない。少しも虫に食われていない農産物を作りたいならば農薬を使いまくればある程度なんとかなるが、健康に悪いから買いたくない食べたくない消費者。農薬が無ければ農産物の大量生産ができないし農薬が悪とは思わないが、虫食い農産物も含めて規格外の基準や考え方を改める時期ではないだろうか。ただでさえ天候不良や肥料価格高騰で農家はかなり苦しい。
浦幌町の食料自給率は2900%以上という。浦幌町内だけでいえば29年以上食べていける食料をたった1年間で生産しているわけだ。因みに東京都の食料自給率は0.47%らしい2)。浦幌町でこれ程たくさんの食料が生産されていれば規格外の野菜も多いことだろう。規格外野菜のなかでもおやさいくれよんの材料に選ばれているのはカボチャ、アズキ、トウモロコシ、ジャガイモ(レッドムーン)、ムラサキタマネギ、ビーツなど10品目。このうちムラサキタマネギとビーツは橋枝物産の規格外野菜が使われていると溝口さんが教えてくれた。この“もったいない”現状を何とかしたいという思いから作られたおやさいくれよん。1つ購入して1歳になったばかりの姪っ子にプレゼントすることにした。
1)捨てられる食べ物たち 食品ロス問題がわかる本,井出留美,旬報社,2020.
2)日本の「食料」を学ぶ2 知るから始める「食料自給率のはなし」,農林水産省,2023年2月.
まとめ|浦幌町の行者ニンニク
ちょっと様子を見るくらいの気持ちで行った今回のフェア。充実した時間を過ごすことができて橋枝さんと溝口さんにはとても感謝です!!
最後に一つ。
行者ニンニクをフリーズドライしたパウダーを購入した。漫画のゴールデンカムイで登場するネギ属の多年草。アイヌ語でプクサと呼ばれる行者ニンニクは生育期間がとても長く、収穫まで7年位かかると何処かで聞いた覚えがある。栽培されている行者ニンニクを見たことはあるが食べたことはなかった。販売担当の方に教えてもらったが、近隣の森で普通に採れるそうで浦幌町ではポピュラーな植物とのこと。その晩早速、鮭のホイル焼きに使ってみたところ香りが良いスパイシーなホイル焼きに仕上がり箸が止まらない。漫画の描写は正しかった。
コラム著者
小島 英幹
2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法など。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の研究に着手する。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。