現地レポート
北関東の複数の農家におけるモスバリアジュニアⅡレッドの効果と使い方およびその違い
公開日2021.05.18
更新日2021.06.21

北関東の複数の農家におけるモスバリアジュニアⅡレッドの効果と使い方およびその違い

難防除害虫であるアザミウマは様々な農作物に被害を与え、農業上最も重要な害虫の一つとされています。化学農薬への抵抗性も高まっており、天敵導入や防虫ネット利用など複合的な防除対策が求められています。複合的防除対策のなかでも、赤色LED照射はアザミウマに対する忌避効果や行動を抑制させる技術として農業技術会議の2020年農業技術10大ニュースに選ばれるなど注目を集めています。
セイコーエコロジアが設置をすすめている「赤色LED防虫灯:モスバリアジュニアⅡレッド」はアザミウマ類に対して効果的で、ユーザー様から大きな好評を頂いております。

はじめに

今回、これまでにモスバリアジュニアⅡレッドを設置させていただいたユーザー様の農場で、モスバリアジュニアⅡレッドの設置状況とアザミウマの発生状況を確認するために、群馬県と栃木県に現地調査に行ってきましたので、ここにご報告したいと思います。尚、本報告は下表の訪問日時点までの状況を取り纏めております。

各農家の訪問日と地域と栽培品目

  訪問日 地域 品目
農家A 2021.4/2 群馬県足利市 バラ
農家B 2021.4/2 栃木県小山市 イチゴ
農家C 2021.4/2, 4/16 栃木県都賀郡 イチゴ
農家D 2021.4/2, 4/16 栃木県都賀郡 イチゴ
農家E 2021.4/15 群馬県邑楽郡 カーネーション
農家F 2021.4/15 群馬県邑楽郡 カーネーション
農家G 2021.4/15 栃木県宇都宮市 イチゴ
農家H 2021.4/16 栃木県都賀郡 イチゴ

訪問した農家様

【農家A(バラ)】

2021年4月2日に群馬県足利市のバラ農家にご訪問させていただきました。農家A様は養液栽培で切り花向けのバラを生産されています。

<モスバリア設置とアザミウマ発生状況>

ご訪問時は開花直前のタイミングでまだアザミウマが発生していませんでした。バラの場合、花への被害が最も大きく、開花後に発生状況がわかってくるとのことでした。バラ農家では複数の品種を栽培することが一般的で、黄色→ピンク色→白色→赤色の順番にアザミウマが発生するそうです。

モスバリアジュニアⅡレッドは適切に設置されていました。導入台数は7台で、バラから1mほどの高さに設置されており、効果範囲の半径15m以内にLED照射がハウス全体に行き届くようになっていました。

白色0.6mmと赤色0.8mmの防虫ネットを設置しており、ハウスへのアザミウマ侵入防止に貢献していると考えられました。

【農家B(イチゴ)】

2021年4月2日に栃木県小山市のイチゴ農家にご訪問させていただきました。農家B様は土耕栽培でイチゴを生産されています。

<モスバリア設置とアザミウマ発生状況>

ご訪問時にアザミウマは発生していませんでした。

農家B様はモスバリアジュニアⅡレッドを導入しておりません。リモニカスカブリダニを利用しているとのことで、アザミウマ対策の中でもリモニカスカブリダニなど天敵の導入が最も効果的なのではとのことでした。また、アザミウマ発生前にMICベネビアODを散布しており、アザミウマ対策の化学農薬の使用はMICベネビアODのみとのことでした。ハウスの周囲は田んぼや畑に囲まれており、ご訪問時はアザミウマ発生を助長するような作付け状況ではないと考えられました。

【農家C(イチゴ)】

2021年4月2日と4月16日に栃木県都賀郡のイチゴ農家にご訪問させていただきました。農家C様は土耕栽培でイチゴを生産されています。

<モスバリア設置とアザミウマ発生状況>

ご訪問時にはアザミウマが発生していました。黒色で体長が大きかったことからヒラズハナアザミウマと判断できました。ミカンキイロアザミウマと思われる黄色のアザミウマの個体数は黒色のヒラズハナアザミウマと比較してかなり少ないことが観察できました。

モスバリアジュニアⅡレッドは適切に設置されていました。導入台数は6台で、イチゴから0cmの高さ(草高と同じ高さ)に設置されており、効果範囲の半径15m以内にLED照射がハウス全体に行き届くようになっていました。

防虫ネットと天敵利用はしておらず、訪問日の数日前にスピノエース顆粒水和剤を散布したとのことでしたが、アザミウマの殺虫効果は小さかったとのことでした。

【農家D(イチゴ)】

2021年4月2日と4月16日に栃木県都賀郡のイチゴ農家にご訪問させていただきました。農家C様は養液栽培でイチゴを生産されています。

<モスバリア設置とアザミウマ発生状況>

ご訪問時にはアザミウマが発生していました。黒色で体長が大きかったことからヒラズハナアザミウマと判断できました。ミカンキイロアザミウマと思われる黄色のアザミウマの個体数は黒色のヒラズハナアザミウマと比較して少ないことが観察できました。

モスバリアジュニアⅡレッドは適切に設置されていました。導入台数は8台で、イチゴから1mほどの高さに設置されていました。8台のモスバリアジュニアⅡレッドはハウス3棟にそれぞれ設置いただいておりますが、このうち最も大きなハウスへの導入台数が1台ほど少ない可能性がありLED照射が不十分なスポットがあるではと考えられました。実際に、このハウスのアザミウマ発生数が最も多く観察されました。

防虫ネットと天敵利用はしておらず、アザミウマ発生後に防除のためにディアナSCを散布したとのことでしたが、アザミウマの殺虫効果は小さかったとのことでした。

【農家E(カーネーション)】

2021年4月15日に群馬県邑楽郡のカーネーション農家にご訪問させていただきました。農家E様は鉢物のカーネーションを生産されています。

<モスバリア設置とアザミウマ発生状況>

ご訪問時にアザミウマは発生していませんでした。開花前ではあったもののアザミウマを含めて他の害虫の発生もありませんでした。

モスバリアジュニアⅡレッドは適切に設置されていました。導入台数は3台で、カーネーションから1mほどの高さに設置されていました。モスバリアジュニアⅡレッドの効果を実感されており、ハウスではLED照射が反射しやすく効果が得やすいとのことです。栽培台には白色反射シートが敷かれており、LED照射の効率性を更に高めていると考えられました。

【農家F(カーネーション)】

2021年4月15日に群馬県邑楽郡のカーネーション農家にご訪問させていただきました。農家F様は鉢物のカーネーションを生産されています。

<モスバリア設置とアザミウマ発生状況>

ご訪問時にアザミウマは発生していませんでした。この地域のカーネーションは例年だとミカンキイロアザミウマとミナミキイロアザミウマが発生するとのことです。

モスバリアジュニアⅡレッドは適切に設置されていました。導入台数は2台で、カーネーションから1mほどの高さに設置されていました。栽培台には白色反射シートが敷かれており、LED照射の効率性を更に高めていると考えられました。

ハウス側面には赤色0.8mmの防虫ネットを設置しており、ハウスへのアザミウマ侵入防止に貢献していると考えられました。

【農家G(イチゴ)】

2021年4月15日に栃木県宇都宮市のイチゴ農家にご訪問させていただきました。農家G様は土耕栽培でイチゴを生産されています。

<モスバリア設置とアザミウマ発生状況>

ご訪問時にアザミウマは発生していませんでした。いちご部会の仲間でもアザミウマの発生は殆どないとのことで、特に、ヒラズハナアザミウマについては名前も知らないとのことでした。

農家G様はモスバリアジュニアⅡレッドを導入しておりません。防虫ネットと天敵利用はしておらず、アザミウマ発生前にグレーシア乳剤を散布したとのことでした。

また、モーターフォグでリフレッシュを定期的に散布していました。リフレッシュ散布によってイチゴが元気になっていることがアザミウマ抑制に効果を上げていると実感されていました。

【農家H(イチゴ)】

2021年4月16日に栃木県都賀郡のイチゴ農家にご訪問させていただきました。農家H様は土耕栽培でイチゴを生産されています。

<モスバリア設置とアザミウマ発生状況>

ご訪問時にはアザミウマが発生していました。黒色で体長が大きかったことからヒラズハナアザミウマと判断できました。ミカンキイロアザミウマと思われる黄色のアザミウマの個体数は黒色のヒラズハナアザミウマと比較して少ないことが観察できました。

モスバリアジュニアⅡレッドは適切に設置されていました。導入台数は5台で、イチゴから30 ~50 cmほどの高さに設置されており、効果範囲の半径15m以内にLED照射がハウス全体に行き届くようになっていました。

防虫ネットの設置はしていませんでした。アザミウマ発生後の3月上旬にカウンター乳剤とファインセーブフロアブルを散布したとのことでした。

各農家のモスバリアジュニアⅡレッドの設置状況

  設置 導入
台数
設置高さ*
(m)
アザミウマ発生状況***
農家A 7 1 発生なし
農家B × -** 発生なし
農家C 6 0 主にヒラズハナアザミウマ
(ミカンキイロアザミウマは僅かに確認)
農家D 8 1 主にヒラズハナアザミウマ
(ミカンキイロアザミウマは僅かに確認)
農家E 3 1 発生なし
農家F 2 1 発生なし
農家G × 発生なし
農家H 5 0.3-0.5 主にヒラズハナアザミウマ
(ミカンキイロアザミウマは僅かに確認)

*植物最上部からモスバリアジュニアⅡレッドまでの高さ
**未設置
***ご訪問日時点

考察

今回の調査では8件の農家をご訪問させていただきました。栽培品目は異なるもののモスバリアジュニアⅡレッドの導入有無に関わらずアザミウマ発生状況に違いがありました。

ここではそれぞれの農家のアザミウマ対策を比較しながら、アザミウマの発生状況について考察していきたいと思います。

考察①

まずそれぞれの栽培品目に発生する主なアザミウマの種類を下表にまとめます。

農家 栽培品目 発生する主要なアザミウマの種類
A バラ ヒラズハナアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ
B,C,D,G,H イチゴ ヒラズハナアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ
E,F カーネーション ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ

栽培品目が異なれば発生するアザミウマの種類も異なることが判ると思います。これまで弊社が設置したユーザーの農場において、モスバリアジュニアⅡレッドはミナミキイロアザミウマとミカンキイロアザミウマに対して忌避効果と行動抑制効果があることが確認できております。つまり、カーネーションとモスバリアジュニアⅡレッドの相性はとても良く、ミナミキイロアザミウマとミカンキイロアザミウマの発生を効果的に抑制できたと考えられました。またイチゴに関しては、それぞれの農家でヒラズハナアザミウマの抑制が思わしくない状況が確認されました。しかし、ミカンキイロアザミウマと思われる黄色のアザミウマの個体数は少なくモスバリアジュニアⅡレッドの効果を確認することができました。

考察②

次に、それぞれの農家のアザミウマ対策について比較したいと思います。

  設置 防虫
ネット
アザミウマ対策の
化学農薬の使用
その他対策 アザミウマ
発生状況4)
農家A アファーム乳剤,アグリメック, etc.
農家B × × MICベネビアOD, etc. リモニカスカブリダニ
農家C × スピノエース顆粒水和剤2), etc. 3)
農家D × ディアナSC2), etc. 3)
農家E × トクチオン乳剤,アグリメック, etc. 白色反射シート
農家F スミチオン乳剤, etc. 白色反射シート
農家G × × グレーシア乳剤, etc. リフレッシュ散布
農家H   カウンター乳剤2),ファインセーブフロアブル2), etc. 3)

1)アザミウマ発生前に散布
2)アザミウマ発生後に散布
3)主にヒラズハナアザミウマが発生(ミカンキイロアザミウマは僅かに発生)
4)ご訪問日時点

農家C・農家D・農家Hはイチゴを栽培しており、モスバリアジュニアⅡレッドを設置しアザミウマ発生初期に化学農薬を散布しています。それぞれの農家で散布した化学農薬の種類は異なりますがスピノエース顆粒水和剤やディアナSCなどアザミウマ類に対して従来ならば殺虫効果を得やすい農薬にも関わらず、ヒラズハナアザミウマが発生してしまっている状況です。しかしながら、ミカンキイロアザミウマと思われる黄色のアザミウマの発生は比較的少ない状況が確認でき、モスバリアジュニアⅡレッドと化学農薬の併用効果が得られていると考えられました。

同じくイチゴを栽培している農家Bと農家Gは、モスバリアジュニアⅡレッドを設置していないですがアザミウマの発生はありませんでした。農家Bはリモニカスカブリダニを利用しておりこれがアザミウマを効果的に抑制できた要因の一つと考えられました。また、アザミウマ発生前にもMICベネビアODを散布しており、これも効果的に作用したと考えられました。農家Gはグレーシア乳剤をアザミウマ発生前に散布したこと、モーターフォグでリフレッシュを定期的に散布してイチゴ株を健全に保っていることがアザミウマを抑制できている要因と挙げております。

農家Eと農家Fはカーネーションに発生するミナミキイロアザミウマとミカンキイロアザミウマを抑制できており、モスバリアジュニアⅡレッドが効果的に作用した要因の一つと考えられました。また農家Fに関しては、赤色0.8mm防虫ネットを設置しておりアザミウマ発生を複合的に抑制できていると思われました。

農家Aに関しては今後の報告を期待したいと思います。

考察③

アザミウマに関わらず、農作物に発生する病害虫には地域性があります。ここでは今回調査した栃木県都賀郡エリアと栃木県宇都宮市エリアの農場の立地とヒラズハナアザミウマの関係について考えていきたいと思います。

栃木県都賀郡エリアと栃木県宇都宮市エリアは直線距離にして10 kmほどの近距離ですが、アザミウマの発生状況が全く異なっていました。都賀郡エリアではヒラズハナアザミウマの発生が顕著でしたが、宇都宮市エリアではヒラズハナアザミウマの認知度も低く発生もしていないことがわかりました。

今回の調査でわかったことですが、ヒラズハナアザミウマを手の平にのせてみると3分以上も飛び立たず動き回っていることが観察できました。手の平にのせている間に指先でつついてみても逃げ回るだけでした。一方、ミカンキイロアザミウマは手の平にのせると直ぐに飛び立って逃げてしまいました。この観察によって、ヒラズハナアザミウマは飛翔性が悪く移動能力も低いことが考えられ、この移動能力の低さが都賀郡エリアと宇都宮市エリアの近い距離でも発生状況が異なる要因の一つとして考えられました。

『赤色LED防虫灯:モスバリアジュニアⅡレッド』とは

モスバリアジュニアⅡレッド

モスバリアジュニアⅡレッドはLED照射を利用してアザミウマの活動を抑えます。モスバリアの赤色LED(波長500~600nm)は半径15mに光が届き、日中に約12時間程度(日の出1時間前~日の入り1時間後までの照射が望ましい)照射するとアザミウマの成虫は方向感覚が麻痺し飛べなくなります。植物体の緑色を識別することが困難になり植物体への誘引や定着が妨げられ、雌成虫の産卵機会が減少し、次世代の幼虫数が減少しますので1世代で繁殖をストップさせる効果があります。※ヒラズハナアザミウマに対しては効果がないのでご注意ください。

まとめ

本現地調査によって、アザミウマ発生状況からモスバリアジュニアⅡレッドの忌避効果と行動抑制効果に傾向がみられることが確認できましたので以下にまとめたいと思います。

  1. モスバリアジュニアⅡレッドはミナミキイロアザミウマ及びミカンキイロアザミウマの抑制に大きな効果が期待できる
  2. モスバリアジュニアⅡレッドはヒラズハナアザミウマに対する効果が小さい可能性がある
  3. ヒラズハナアザミウマに対しては物理的防除(赤色LED、防虫ネット)・生物的防除(天敵)・化学的防除(化学農薬)の複合的な防除対策を適切に行うと効果的と考えられた

2の補足ですが、ヒラズハナアザミウマは飛翔性が小さく移動能力も低いことが考えられ、仮にヒラズハナアザミウマに対してモスバリアジュニアⅡレッドの赤色LED照射に効果があったとしても赤色LED照射から逃れる為の移動ができないことが考察できました。

今回の現地レポートはモスバリアジュニアⅡレッドについてご報告させていただきました。モスバリアジュニアⅡレッドをオススメする方をまとめましたので、アザミウマでお困りの農家は是非一度モスバリアジュニアⅡレッドの導入をご検討下さい。

<こんな農家にオススメ!!>

・ミナミキイロアザミウマとミカンキイロアザミウマに悩まされている農家
・アザミウマに対する複合的防除を実践、検討している農家

北関東の複数の農家におけるモスバリアジュニアⅡレッドの効果と使い方およびその違い

コラム著者

小島 英幹

2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の実践を始める。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。

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