現地レポート
ワイン醸造向け品種のブドウの栽培方法とナイトハーベスト|小林生駒高原葡萄酒工房を訪ねて
公開日2024.03.21
更新日2024.03.22

ワイン醸造向け品種のブドウの栽培方法とナイトハーベスト|小林生駒高原葡萄酒工房を訪ねて

小林生駒高原葡萄酒工房でワイン用のブドウ農園を管理する小出水さんとは、弊社で取り扱う空動扇SOLARとオルガミンを購入していただいたことがキッカケで親交を深めている。
小林生駒高原葡萄酒工房への最初の訪問は2023年6月9日。空動扇SOLARの視察を兼ねて営業に訪れたのだが、初対面にも関わらず小出水さんを含めてレストランスタッフの方々から大変親切に迎え入れていただいた。2024年2月29日の2回目の訪問の際も、スタッフの方々からレストランで提供する食材や工房で醸造したワインの説明をいただき、前回は見て回れなかったブドウ農園にも案内していただいた(農園が広い!多い!!)。
今回の現地レポートでは空動扇SOLARとオルガミンの使用感想に加えて、あまり知られていないワイン醸造用品種のブドウの栽培方法についてヒアリングした内容を記事に纏めています。

小林生駒高原葡萄酒工房について

小林生駒高原葡萄酒工房はワイン向けのブドウを自社栽培し、醸造から販売まで一貫して行っています。現地に訪問すればワイナリー見学ツアーに参加することができ、併設するレストランではワインとペアリングしたランチやディナーを楽しむことができます。また、音楽祭やライブなどのイベントを開催、キャンプ場スペースが併設しているので学びと体験をテーマに生駒高原を満喫できるスポットです。
小林生駒高原葡萄酒工房から車で移動するとワイン向けブドウの農園があり、露地とハウスでピノ・ノワール、ピノタージュ、メルロー、マスカットベリーA、シャルドネなど15品種のブドウを栽培しています。また、イチゴとリンゴの栽培も行っており、イチゴは「よつぼし」と「ほしうらら」を、リンゴは「つがる」と「ふじ」を栽培しています。イチゴは工房に併設するレストランとカフェで提供しており、リンゴは将来シードルを醸造するために栽培しています。

小林生駒高原葡萄酒工房のホームページはここをクリック

小林生駒高原葡萄酒工房のインスタグラムはここをクリック

空動扇SOLARとオルガミンの使用感想

セイコーエコロジア 小島
空動扇SOLARの購入の経緯を教えてください。

小出水さん
ビニールハウスで高設栽培しているワイン用ブドウのなかでも青系ブドウ品種は35℃以上になると色付きが悪くなります。これが原因となり醸造したワインの色付きと味に影響を及ぼすので改善を促すために空動扇SOLARを導入しました。温度を計っているわけではありませんが導入後は涼しくなったと感じています。セイコーステラさんの訪問の際には取り付けに不備がないか見てもらいたくハウスまで来てもらいましたが、特に問題とのことで安心しました。

セイコーエコロジア 小島
オルガミンはイチゴに使用しているとのことですが、使い方や効果を教えてください。

小出水さん
1000倍希釈で定植後から収穫終期まで1~2週間毎に葉面散布しています。オルガミンを使用する前までは糖度が安定せず甘かったり甘くなかったりする課題がありましたが、使用後は12℃以上で安定するようになり効果を感じています。

ワイン用品種のブドウ栽培について

セイコーエコロジア 小島
小林生駒高原葡萄酒工房のブドウ栽培について教えてください。

小出水さん
弊社は露地3ha程に加えて、ビニールハウスで高設ベンチを使用してブドウ栽培を行っています。ここの樹は4年生になりますが2022年は5000房が収穫できました。収穫したブドウは醸造して「小林ワイン」のブランドで販売しています。

セイコーエコロジア 小島
これまでに仕事で宮崎県には頻繁に訪れていますが、宮崎県のワイナリーに訪問するのは2件目です。宮崎県はワイナリーが多い印象を持っていますが、ここ小林市もワイン産業が盛んなのでしょうか。

小出水さん
小林市のワインは正直なところまだあまり知られていませんが、ブドウは宮崎県で屈指の産地です。当葡萄酒工房は2017年にワイン特区の醸造免許を取得していて、ワインに使っているブドウは全て自社農園で栽培したものです。ワイン用と青果用ではブドウの栽培方法に違いがあり、国内外のワイナリーを訪問して試行錯誤しながらブドウ栽培をしています。

セイコーエコロジア 小島
ワイン用と青果用とでは栽培方法が異なるのですか。

小出水さん
違いますね。たとえば新梢の葉は青果用のシャインマスカットは8枚ですがワイン用では12枚で管理します。また、新梢が長いと脇芽をかく手間が増えてしまい栄養も分散して房にバラツキが出てしまうのでワイン用では新梢を短く管理します。青果用は成熟した房から順々に収穫していきますが、ワイン用はナイトハーベストで一斉に収穫するので新梢は短く管理した方が作業効率が良くなります。

セイコーエコロジア 小島
ワイン用のブドウは小粒のものが多い印象ですが理由があるのですか。

小出水さん
美味しいワインを造るには種が重要です。種には渋みがありこれが美味しいワインの決め手になります。だから小粒で実が多い房の方がワイン用品種に適しています。

ナイトハーベストとは!?

セイコーエコロジア 小島
先程ワイン用のブドウを一斉に収穫すると仰っていましたがどのような収穫方法なのですか。

小出水さん
「ナイトハーベスト」といってブドウを夜に収穫することを言います。当農園では8月の盆過ぎから10月頃の期間にナイトハーベストを行っており、まずマスカットベリーAから始まって終盤はカベルネ・フラン。10品種以上栽培していますがそれぞれの品種は一晩で収穫を完了するようにします。ナイトハーベストは夏の収穫期間中に品種毎に4~5回に分けて行いますが夜中の3時から早朝の8時までに収穫をするので結構大変な作業です。収穫したブドウは10℃の冷蔵車で1~2日間冷やし、その後は一気に全部絞ります。このようにするとブドウの糖度や味の質を下げることなく醸造に用いることができます。これらの作業もオーストラリアに行って研修を積んできています。

おわりに

小林生駒高原葡萄酒工房の露地のブドウ農園は、これまで筆者が訪れた青果用ブドウの農園と比較して非常に広いスペースを確保した栽培管理だと思いました。また、草もしっかり刈られており農業における5Sの徹底を感じとることができました。
レストランのランチは大変美味しく、筆者は2回の訪問ともハンバーグを頂いている。デザートにはイチゴのアイスクリーム、ドリンクは地域のハーブ園で栽培されたレモングラスを頂いた。さて肝心のワインと言えば、マスカットベリーA樽熟成2021の赤と、シャルドネ2021の白を購入。個人的に白ワインが好きなのだが、ここのシャルドネはトロピカルな香りが特に高く、香りの初めに微かにパイナップルの感じがある。とても飲みやすくてまた手に取りたいとすぐに思う。まだ本数が確保できないそうで購入できる場所は極限られているとのこと。オンラインショップで購入できるので気になる方はチェックしてみては如何だろうか。

小林生駒高原葡萄酒工房のワインのオンラインショップはここをクリック

ワイン醸造向け品種のブドウの栽培方法とナイトハーベスト|小林生駒高原葡萄酒工房を訪ねて

コラム著者

小島 英幹

2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法など。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の研究に着手する。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。

Tweets by SEIKO_ECOLOGIA
youtube
ご注文
見積依頼
お問合せ