はじめに
今回はスマートキャッチャーをご利用頂いている東京都の二件の農家に訪問させていただき聞き取り調査を行いましたので、ここに報告させて頂きたいと思います。
お聞きした貴重な生のご感想をなるべくそのまま記載していますので、ご導入の参考にしていただけますと幸いです。
各農家の訪問日と地域とスマートキャッチャー使用の栽培品目
訪問日 | 地域 | スマートキャッチャー使用の栽培品目 | |
---|---|---|---|
農家A | 2021/6/4 | 東京都調布市 | トマト(土耕) |
農家B | 2021/6/4 | 東京都府中市 | キュウリ |
各農家のスマートキャッチャーの使用状況と使用感想
農家A様(トマト)
2021年6月4日に東京都調布市のトマト農家に訪問させていただきました。スマートキャッチャーは土耕栽培トマトのハウス内でご利用いただいております。
<スマートキャッチャーの使用状況と感想>
スマートキャッチャーは420m²の鉄骨ハウスに1台を設置して頂いております。設置高さは1.5m程度でした。飛翔害虫発生前の定植後から収穫終了までの日中の明るい時間帯にスマートキャッチャーを点灯しているとのことです。夜間の点灯については、住宅街ということもあり近所迷惑にならないよう点灯を控えているとのことでした。スマートキャッチャーの点灯はタイマーで制御していました。アザミウマとコナジラミが多く捕獲できるとのことです。スマートキャッチャーの要因と断定できませんが、トマト黄化葉巻病の発生はないとのことでした。雨の日に殺虫剤散布ができないため、スマートキャッチャーはそれを補助することができとても便利と高評でした。また、飛翔害虫防除に対する「お守り」として非常に役立っていると仰って頂きました。
農家B様(キュウリ)
2021年6月4日に東京都府中市のキュウリ農家に訪問させていただきました。スマートキャッチャーはキュウリのハウス内で利用いただいております。
<スマートキャッチャーの使用状況と感想>
スマートキャッチャーは550m²の鉄骨ハウスに1台を設置して頂いております。設置場所はハウス出入口が効果的とのことで、スマートキャッチャーのLED光の有効範囲である直径24mを参考に出入口から10m付近に設置をしていました。飛翔害虫発生前から24時間連続で点灯しているとのことです。アザミウマとコナジラミが多く捕獲でき、感覚的にもこれら飛翔害虫が減っていることが実感できるとのことです。特にアザミウマに関しては被害果が減少したとのことでした。更に、アザミウマ類の増加を抑え込んでいることによって殺虫剤での防除が間に合い、さらなる被害拡大を抑制できることに期待していると仰っておりました。
スマートキャッチャーでこれらの飛翔害虫を捕獲防除できていることで「精神的なゆとり」ができており、殺虫剤散布も減らせていることから高評を頂きました。但し、飛翔害虫の防除をスマートキャッチャーに頼り切るのではなく予防的に利用することが効果的とアドバイスして頂きました。
考察
今回、訪問させて頂いたスマートキャッチャーユーザー様はトマトとキュウリを栽培されています。いずれの栽培品目もコナジラミやアザミウマの様な飛翔害虫の防除が重要ですが、スマートキャッチャー設置によってコナジラミとアザミウマが多く捕獲できていることが確認できました。スマートキャッチャーはコナジラミとアザミウマの他にもキノコバエ、ハモグリバエや夜蛾などが捕獲できますが、今回はトマト農家とキュウリ農家で聞き取り調査を行ったため主要飛翔害虫であるコナジラミとアザミウマが特に多く捕獲できたと考えられます。
ここでは下表をもとに二件のユーザー様を比較してスマートキャッチャーの効果について考えていきたいと思います。
農家A | 農家B | |
---|---|---|
栽培品目 | トマト | キュウリ |
ハウス面積 | 420 m² | 550 m² |
設置台数 | 1台 | 1台 |
点灯時間 | 日中の明るい時間帯 | 24時間 |
主な捕獲飛翔害虫 | コナジラミ・アザミウマ | コナジラミ・アザミウマ |
間接的有効性 | トマト黄化葉巻病発生がない | アザミウマによる被害果の減少 |
役割と効果 | 雨天日の薬散回避に対する補助的な役割 | 殺虫剤の散布回数の減少、飛翔害虫防除に対する予防的効果 |
スマートキャッチャーの設置台数及び点灯時間と捕獲飛翔害虫の関係
訪問させて頂いた二件のユーザー様のハウスはそれぞれ420 m²と550 m²であり、スマートキャッチャーのLED光有効範囲に対して適切な設置台数でした。農家A様はご近所との兼ね合いから日中のみの点灯、農家B様は24時間点灯でしたが、いずれの場合でもコナジラミとアザミウマを多く捕獲していることが確認できました。つまり、ハウス面積に対して適切な台数を設置することで、最低でも日中の明るい時間帯にスマートキャッチャーを点灯すればコナジラミとアザミウマを多く捕獲できることが考えられます。
しかしながら、栽培品目が異なっている(トマトとキュウリ)こと、及び飛翔害虫発生に関しては地域差や年によって発生量が異なるため、全ての栽培品目・地域・栽培シーズンで同様の結果が期待できるとは限りません。また、夜蛾類は夜行行動性であるため捕獲対象が夜蛾類の場合は夜間点灯が最も効果的となっています。
主な捕獲飛翔害虫と間接的有効性について
一部の飛翔害虫は特定の植物に対してウイルスを媒介します。例えば、トマトではトマト黄化葉巻病(TYLCV:Tomato Yellow Leaf Curl Virus)がシルバーリーフコナジラミとタバココナジラミによって媒介され、キュウリではキュウリ黄化えそ病(MYSV:Melon Yellow Spot Virus)がミナミキイロアザミウマによって媒介されます。
両ユーザー様とも主な捕獲飛翔害虫についてコナジラミとアザミウマを挙げられました。
農家A様のトマトにはトマト黄化葉巻病の発生がなくスマートキャッチャーでコナジラミ類が多く捕獲できていることから、スマートキャッチャー設置によるトマト黄化葉巻病対策が間接的有効性として関わっていることが考えられます。
農家B様のキュウリではアザミウマの被害果が減少しており、スマートキャッチャー設置によるアザミウマ被害果減少が間接的有効性として関わっていることが考えられました。また多少のキュウリ黄化えそ病の発生はあるものの、アザミウマ類増加の抑制によって殺虫剤散布が間に合っている可能性があり、スマートキャッチャー設置によるキュウリ黄化えそ病抑制が間接的有効性として今後期待できると考えられました。
スマートキャッチャーの役割と効果
雨天日は殺虫剤散布を行うことができません。そのため例えば長雨が予想される場合は、殺虫剤を散布できないことで飛翔害虫の発生や繁殖が促されてしまう恐れがあります。農家A様はスマートキャッチャーを設置することで、殺虫剤散布に対する補助的な役割を担うことができると仰って頂きました。農家B様はスマートキャッチャー設置によって予防的効果を得ており殺虫剤の散布回数を減らすことができていました。スマートキャッチャーは飛翔害虫の発生予測(モニタリング)に最適ですが、雨天日の殺虫剤散布回避や飛翔害虫減少により殺虫剤散布回数を減らすことができることも可能だと考えられます。
また両ユーザー様ともスマートキャッチャー設置について「お守り」や「精神的なゆとり」と表現して頂きました。ウイルス病抑制・被害果の減少・雨天日薬散回避時の補助・薬散回数減少などが実際に効果として現れているため最適な表現をして頂けたと思います。
これらの考察をもとにスマートキャッチャーの効果について以下の様にまとめたいと思います。
- スマートキャッチャーを適切に設置することで日中点灯においてトマトの、24時間点灯においてキュウリのコナジラミとアザミウマを多く捕獲できる
- コナジラミ類を多く捕獲できることによってトマトではトマト黄化葉巻病抑制に寄与できる
- アザミウマ類を多く捕獲できることによってキュウリでは被害果減少とウイルス病抑制に期待できる
- 雨天日の殺虫剤散布回避や飛翔害虫減少に伴い殺虫剤散布回数を減らすことができる
吸引式LED捕虫器:スマートキャッチャーとは
吸引式LED捕虫器:スマートキャッチャーはビニールハウス向けのLED捕虫器です。農作物被害の原因となるコナジラミ類・アザミウマ類・キノコバエ類・ハモグリバエ類・ヤガ類などの飛翔害虫をLEDの光で誘引し、強力吸引ファンで専用捕虫袋に捕獲します。推奨設置数は10a(1000㎡)あたり2台ですので手軽に導入ができます。
使い方はとても簡単。農作物の生長点付近に吊るして電源に電源コードを差し込むだけです。24時間稼働させることでより多くの害虫を捕虫することができます。トマト・キュウリ・イチゴといった多くの農作物でご使用いただいています。
まとめ
今回は「吸引式LED捕虫器:スマートキャッチャー」について現地レポートさせて頂きました。スマートキャッチャーは様々な飛翔害虫を捕獲できますが栽培品目や地域などによって捕獲できる飛翔害虫の種類や個体数は異なってくると思います。今後も現地での聞き取り調査を行っていきますので、スマートキャッチャーのご購入を考えている方は設置の参考として現地レポートをご参考頂ければと思います。